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腐れ縁の旅路

「勇樹、お前強くなったよなあ」
という唐突な一言は俺が今せっせと引きずっている棺桶の中から響いた
「い、いきなり何だよ?」
つい数ヶ月前まで'まさに平凡'といった人生を生きてきた俺は
慣れない褒め言葉を聞いて照れを隠し切れない変な声で返事をした
「だってそうだろー、ここに飛ばされた頃はオレもお前も同じ位でさー
 倒せるモンスターも同じ数だったし、オレが死ぬ時は大体お前も死んでただろ」
そう俺達は数ヶ月前何の脈絡もなくこの王道ファンタジーな異世界に飛ばされた
外に行けばモンスターが出るし、当然の如く魔法(俺は使えないけど)も存在している
今でこそ流れ着いたギルドで用心棒まがいの仕事をしているが
最初の数日なんかは本当に酷かった、思い出したくもない位にだ

「それが今じゃあ、あのアホみたいに硬い竜もお前一人でバリバリ倒すし
 今だって死んだオレ引き摺って悠々帰路についてんじゃんかぁ?」
明らかに拗ねている声で棺桶の中の恭介が愚痴る
日本に居た頃やったRPGの死体はこんなにお喋りでは無かったが
この世界では'棺桶の中の死体は喋る'というのが常識だ
「あれはお前の攻撃力UP魔法の補正が入ってるからだろ
 今こうして普通に帰れてるのも恭介がちょくちょく回復してくれたからだし」
「あんなの微々たる物ですー、大体何でオレだけ魔法タイプなんだよー…」
最初は俺も恭介もナイフで戦っていたのがいつの間にか
俺は大剣を使うようになり恭介は魔法を使えるようになった
今日みたいに恭介一人が死ぬ度コイツは「自分は弱い」と拗ねるが
正直言って高難易度魔法をポンポン掛けて来るコイツが弱い訳無いと俺は思う

「俺は魔法羨ましいけどなあ、パーっと光って綺麗だしさ」
「綺麗でも弱けりゃ意味無いだろぉ、一人で竜と会ったら即嬲り殺しなんだぜ?」
恭介の使える魔法はサポート魔法や回復魔法ばかりだ
恭介が魔法を使い始めた頃今よりずっと弱かった俺が死んで死んで死にまくるのを見て
ついつい俺を生き延びさせる様な魔法ばかりを練習してしまったせいらしい
魔力皆無の俺にはよく分からないが最初の頃に補助魔法にのみ入れ込んでしまうと
攻撃魔法は習得し辛くなってしまい逆もまた然りなんだと恭介が言っていた

「その時は俺が駆けつけて変わりに戦うよ、……今日は遅かったけどさ」
「まー確かに、もうちょい早く来てくれたらギリギリ生きて帰れたかもなぁ」
「……悪い」
「いえいえ来てくれたってだけでと~っても感謝してますよ?」
芝居がかった声でそうふざけた少し後、急に真面目な声になった恭介は言った
「……冗談抜きでさ、ホントに感謝してんだぜ
 一緒に飛んだのがお前じゃなきゃここまで生き残れなかっただろうしな」
「俺もお前と一緒で良かったよ、最初の一日とか一人だったら100%モンスターの餌だしな」
「うぎゃー!!止めて!思い出したくなーい!!!」

後ろから響く間の抜けた声と棺桶の重さに何故か安心を感じて
とりあえずもう少し速く駆けれるようになろうと俺は思ったのだった