※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

嘘つき同士

「あ、リリコちゃんの写真集」
新刊コーナーで立ち止まられて、足を止める。
最近売り出し中のアイドルが表紙にでかでかと映った写真集が積まれていた。
物凄い目が大きくて人形みたいだが、目力が強過ぎて俺の好みじゃない。
「お前そんなギャル系好きだったっけ」
首を傾げる。
「前に女子が聞いた時、清楚な子が良いとか言ってなかった?」
「あー?……あーはいはい。アレね、ウソ」
「嘘ォ?」
そいつは無駄に綺麗な笑顔で、にっこりとこちらを見た。
いわゆるイケメンに属するこの男は女の子に事欠かない。
休み時間に恥ずかしげにこいつの異性の趣味を尋ねて来た少女たち。
彼女らの「そうなんだ!」という期待に満ちた声が、途端に虚しく聞こえた。
酷い話だ。
「だって清楚な子ならがっついて来ないでしょ?」
おいおい。溜息を吐いてしまった。
「イケメン様は大変だな」
「困っちゃうよねー」
「皮肉だっつーの」
「知ってるし。でもほんとのことっしょ」
積み上げられた写真集の一冊を手に取って、そいつは軽口を叩く。
神様はなんだってこいつなんかの顔を整えてしまったんだろうか。
「好きな子以外に言い寄られても困っちゃうからさあ」
しんみりした表情を作っている。呆れた。
「物は言い様ってか?単純に面倒なだけのクセに」
「まっ、それもあるけどねー」
手元の写真集をひっくり返して値段を見たらしい。
男は山の上にそれを戻す。
「そーいや、お前の好きなタイプは?可愛い系?お姉様系?」
「……」
アーモンドの形をした焦げ茶の瞳がこちらを伺っていた。
写真集の右上の料理本に伸ばしていた手を止める。
「顔が綺麗じゃなくてケツが軽くなくて嘘つかなくて他人の趣味を詮索しない奴」
「なにそれ俺以外ってこと!?」
「利口なワンちゃんですねー」
「ひっど!ひどい!!傷ついた!!」
「うるせえ」
踵を返して当初の目的地である参考書コーナーに向かった。
いつもより弾む心臓の音を堪えながら。

本当のうそつきは俺の方かもしれない。