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長命な者と短命な者

「理不尽だ」
縁側にのんびり腰を下ろす彼は、あと少しで消えてしまうという。
出逢ったのは去年の春。まだ少ししか共に過ごしていない。なのに。
「仕方なかろう。いくらわしとて時の流れには逆らえん」
「だからって、何で。何千年も、生きてきたくせに」
俺はたかだか20年を生きたくらいで、百年も生きることは出来なくて。
これほど寿命が違うのに、どうして俺が置いていかれるだろう。
唇を噛み締めていると、ふいに引き寄せられた。
彼の腕の中、見上げれば常に変わらない穏やかな表情と出逢う。
「嘆いたところで死は避けられんよ」
いつも時間がもったいないと、お前は言うではないか。
それとこれとは話が違うと返せば、不思議そうに首を傾げる。
「わしには瞬きに等しい長さだが、お前には違うのだろう?」
「そう、だけど…。……ん?あれ、ちょっと待て。あと少しって、何年だ?」
慰められて、ふと失念していた事実を思い出す。
彼とは生きる歳月の長さが違う。当然、時間の流れる感覚さえ異なっている。
あと少しと聞いて数ヶ月とか数年かと勝手に思ったけれど。
「そうだな、お前達の概念で言えば、…半世紀くらいか」
「は、はははっ!それじゃあいい勝負だなッ!」
早とちりして落ち込んだ自分が可笑しくて笑った。
すると彼の指先が頬を撫ぜる。
「うん。お前はやはり、笑っていた方がいい」