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犬猿の仲

姿を見ればドロップキック。
擦れ違えば取っ組み合い。
目が合えばリアル鬼ごっこ。


いつから嫌いだったかなんてもう覚えていないけれど、とにかく俺たちは俗に言う幼馴染で、更に言うならば犬猿の仲というやつだ。

午前中、教室。
「おい駄犬、数学で赤点取ったってマジか?」
「うるせーよクソ猿、お前だって古典で赤点だったんだろ、ざまあ」
「・・・先輩たちの犬やってて忙しかったのか?大変だなパシリ君は」
「・・・そういう委員長はいつもキーキー他人に注意する癖に自分の行動が伴ってないんだな」
「・・・不良!下っ端!校則違反!
「・・・オタク!ダサ眼鏡!バカ委員長!」
お互いに胸倉を掴み上げたところで先生に拳骨を食らって一時休戦となる。いつものことだ。

昼休み、自習室。
「・・・で、成績が下位迷子中のわんちゃんはどうしてここにいるのかな?」
「阿呆か、追試前に勉強するのは当たり前だろ。どうした?顔真っ赤だぞ?ああ猿だからか」
「あぁそうか勉強する気になったのか、いい心掛けだな馬鹿の癖に。とりあえず別の所行けよ」
「はぁ?なんで俺が移動しなきゃなんねーんだよ、嫌ならお前がどっか行けば良いだろ」
「俺が先にいたんだ、お前が出てくべきだ」
「お前が嫌なんだからお前が出てくべきだ」
口喧嘩で昼休みが終わり、結局勉強できずじまい。これもいつものことだ。

放課後、バス停。
「・・・おや、パシリ犬がまっすぐ家に帰るとは珍しいな」
「・・・あぁ、おかげで見たくもねぇ眼鏡猿を見ちまった、残念だ」
「は、数学の時間中ずっと爆睡してるお前が今更一人で勉強したって無駄だろうに」
「お前こそ古典のこの字も理解してねぇんだろ?明日の追試大丈夫なのかよ、えぇ?」
「・・・お前なんかに心配される程じゃない」
「・・・俺だって」
タイミングが良いのか悪いのか、丁度バスが来て、お互い無言で乗り込む。やっぱりいつものことだ。

夕方、隣り合う互いの部屋の窓から。
「・・・もしもし、わんちゃんはお散歩のお時間ですか、どーぞ」
「・・・もしもし、猿はバナナ食って寝る時間ですよ、どーぞ」
「バーカ、まだ夕方だ。なぁに、犬のお勉強を邪魔してやろうと思って呼んだまでだ」
「邪魔できる程お前も余裕無ぇだろ。自分の文系科目嫌い自覚しろっつーの」
「・・・そんなこと言って、どうせまた詰まってんだろ」
「・・・そういうことを口に出すってことは、お前も行き詰ってんのか?」
「・・・」
「・・・」
「・・・おい犬、参考書とノート持ってこっち来い。教えてやるから教えろ」
「人に物を頼む時は『教えてください』だろ。すぐ行くから茶菓子用意して、ついでに首洗って待ってろ」
不本意ながらの勉強会が始まる。結局のところ、いつものことだ。

姿を見ればドロップキック。
擦れ違えば取っ組み合い。
目が合えばリアル鬼ごっこ。


いつから嫌いだったかなんてもう覚えていないけれど、とにかく俺たちは俗に言う幼馴染で、更に言うならば犬猿の仲というやつだ。
だけどなんだかんだでこの関係は続いている。本当に嫌なら離れれば良いのに、そうしないのは単純に、俺の成績表のためである。そうだったらそうだ。


「おい犬」
「何だ猿」
「・・・ありがとう」
「・・・こちらこそ」


…あぁ。これだからタチが悪い。