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デリケートな攻め×デリカシーのない受け

「そういやさー」
しばらくぼーっとした後にどうでもいい話を始めるのは良成さんの癖だ。
煙草を取るために俺の体の上に手を伸ばし、よいしょ、なんて言ってる。おっさん。
「んー?」
この人シャワー行かなくていいのかな。俺は少し眠い。起きたらシャワー行こう。
「俺さー、初めてアナルセックスした時の相手がさぁ、酷いやつで」
……眠気も覚めたよ。

「いきなり、何」
あからさまに不満を滲ませてみても、良成さんは煙をふう、と吐き出して全く気にしてる様子はない。
このデリカシーのなさはどうだよ。問題だろ。男ってデリケートだよ、俺なんか特にそうだし。あんただって案外そうじゃないか。
……デリケートよりバカが勝るのかな。今度病院連れてった方がいいのか?
「いや、俺だってさ、初めてな訳じゃん?あっちは初めてじゃないっぽかったけど、なんか勘違いされててさぁ」
……昔の良成さんってあんまよく知らないけど、まあそうかもね。遊ぶの好きなのは多分変わってないんだろうし。
俺は返事もせずに、でも耳を澄ませて聞いていた。聞きたくもない内容でも途中まで聞くと気になるよな。

痛いっ、つってんのにさ、あんま慣らしてもらえないつーかさ、わざと痛い風にやるんだよね。
俺が嫌がるの見て喜ぶっつーかー。今考えるとあいつSだったのかな?俺そーいうシュミないっつーの、ねぇ?
ん?何?あー、うん、そうそう、でも俺もわかんなかったからさぁ。こんなもんなんかなーうわー楽しくないなーってさあ。

「……じゃ、今も楽しくないの」
「え?」
「セックス」
何このまとまりのない話。しかも昔の男とかさ、……聞きたいか?
正直俺は聞きたくないし、もし俺がそんな話したらこの人だって俺のほっぺた抓る位はすると思うんだけどどうなんだろ。
脈絡のない話をするのが得意とはいえ今回のはちょっとアレだ。

「んー?今は楽しいよー?」
……ですよね。じゃなきゃ進んで俺に乗っかってきたりしないですよね。
てっちゃん、灰皿取って、と言われるままに灰皿を差し出す。縁で煙草の灰を落としてる、その灰を見ていた。
良成さんはちょっと笑いながら、まあ色々ありましたからねえ、なんて言ってる。何が色々だこのアホ親父。
「あ、そ」
あー、なんか不機嫌みたいな声出た。ムカつく。
「その後、気持ちいいのわかったんだよねー」
はいはい。ていうか、考えてみたらあんた痛くされるの嫌いじゃないじゃん。
それとも痛いのが気持ちよくなっちゃったってオチかよ?面倒だな寝てやろうかな。
「特に今はさ」
じっ、と小さな音がして良成さんが煙草を消した。
俺は顔を上げてはあそうですかそれはよかった、とかわざと言おうかと少し迷う。
「てっちゃんとだからさあ」
……何言ってんだろこの人。
「やっぱさぁ、痛いばっかってのはさあ……」
愛がないよねえ。お前が俺の事痛くするのは愛があるもんねぇ。
良成さんの愛飲する煙草の香りが近くなる。ふっと香るそれが俺の口の中に溶けた。

愛があるからねぇ。……じゃあ試しに、痛い事ばっかりしてみようかな。
それでもあんたが気持ちいいっていうんなら、きっとそこには愛があるよね?