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一夫多妻(BL版)

どこも同じような大きさと色をした墓石だらけだったので、迷っていたら、「蒼井?」と背後から聞き慣れた声がした。
振り向くと、水がなみなみ入ったバケツとちいさな花束を持った茜田がいた。
俺と同じように、学校が終わってそのままここに来たのか制服姿だった。学校指定のバッグも肩からさげていた。
「お前もあいつの墓参りに来たのか」
俺が言うと、茜田は小さく頷き「全然来られなくて今日が初めてなんだ、実は」と言った。
茜田の後ろに着いていったので、『桃井家の墓』の前にどうにか辿りつけた。
こうして墓石にあいつの名前があるのに、実感が全く湧かない。
二ヶ月前に葬儀に参列して、棺の中の遺体もこの目で見たはずなのに。
今にも起き上がって「ばーか嘘だって!」と笑いそうな、安らかな死に顔だったせいだ。きっと。
「とりあえず、花を…あっ」
茜田が驚いた声を出すので、視線を同じところへ向けると、そこには溢れそうなほど生けられた花があった。
そして、その前には大量の手紙と、あいつの好きな野球チームのユニフォームと、あまりに多すぎたせいか地面にこぼれおちた、線香があった。
「これじゃあ花は生けられないな」茜田が苦笑した。「花は持って帰るよ」
「桃井の野郎は死んでもモテるのか。あいつ先輩にも可愛がられてたし、後輩にも慕われていたからなぁ」俺が言った。
「そうだな…」
それから、しばらくお互いに無言になり、
「…あいつ、こんなに愛されていたのにな…」
独り言のように茜田が言った。涙声だった。