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充電器×携帯

「……待ってくれ……頼むから」
 プライドを捨てて懇願した声は、大抵は聞き入れられない。
 それでも、彼の前に連れてこられ秘められた部分を露出させられると、拙い抵抗を試みずにはいられなかった。
「今更純情ぶらないで下さいよ。一日一回は喰ってるって言うのに」
 冷やかにつきつけられるのは見たくもない真実だ。
 体を辱められ、言葉で詰られる瞬間は、何回経験しても慣れることはなかった。
「わかってるだろう? 今日は――」
「ええ。見ればわかりますよ。電池マークがまだ2本残ってますね」
「電源が切れるまでとは言わない! せめて……マークが1本の時にしてくれないか」
「ダメです。明日早いんでしょう? それに――」 
 ――ぎりぎりまで我慢すれば、その分受け入れる時間は長引くことになりますよ?
 ことさらゆっくりと続けられた言葉に、これ以上反抗することは許されなかった。

×    ×    ×

 体をぴたりと密着させられて、いやでも相手の存在を感じさせられる。
「ほら、電気が流れ込んでるの、わかります?」
「あ、あ、あ……」
 繋がっているところから体が満たされていく感覚に、もうまともに思考することができなかった。
 いつもこうなのだ。ひとたび彼自身を埋め込まれると、数時間は抜くことを許されない。
 その間は、一方的に流れ込んでくる快感にひたすら耐え忍ぶことになる。
「ねえ、気づいてますか? だんだんと充電の切れる時間が早くなってること」
「それ、は……っ」 
「そりゃそうですよね。あなたと俺がこういう関係になってから、もう随分と時間がたった。
 充電を繰り返せばあなたの電池は消耗し、より一層、俺を求めるようになる」
 ――わかっていた。
 だから今日も、ぎりぎりまで充電を拒んだのだ。 
「あなたは俺なしではいられない体になるんですよ。あなたの意思とは関係なくね」
 心が壊れることが、体が浅ましくなることが、もう充分過ぎるほどわかっていた。
「ああ、大丈夫ですよ? あなたの電池パック、使いすぎてダメになっちゃっても新しいを入れればいいだけの話ですから。
 そのときは初物に戻ったあなたの体をまた最初から調教してあげますよ。嬉しいでしょ?」
「な、ぜ、」
 ひとり言のように零れ落ちた言葉を、笑う声が聞こえる。
「なぜ、とは?」
「俺は、どのみちあんたなしではいられない体だ。なのに、あんたは、なぜ必要以上に俺を貶めようとする?」
「楽しいからですよ」
 彼から告げられる言葉は、その酷薄さと裏腹に、どこか秘めごとを打ち明けるような親密さを孕んでいて、時折俺を混乱させる。
「誰もに必要とされ、最先端の技術とデザインを与えられ、生活と娯楽の頂点に君臨するあなたは、俺なしでは生きていけない。
 プライドの高いあなたが屈辱に耐えて俺の元へやってくるのを見るのが、たまらなく好きなんです」