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デレが分かりやすいツンデレ×デレが分かり難いツンデレ

「あいつは俺の事何か言ってたか?」
人事異動で2課から4課に配属された僕が、挨拶もそこそこに訊かれたのはその質問だった。

4課の佐藤係長と、2課の山田課長が犬猿の仲なのは、社内の人間なら誰でも知っている。
正確に言うなら、年下の佐藤課長が一方的に山田課長を目の敵にしており、山田課長は大人の態度で無視しているという状況なのだが。
対立の理由は定かでないが、一番大きな要因は、二人のタイプが正反対な事だろう。人情家で上昇思考の強い佐藤課長と、有能だがマイペースで出世欲のない山田課長。
「いや、山田課長は特に何も…」
「何も?悪口もか?」
オレなんか眼中にないってか。ブツブツ言いながら、佐藤課長の機嫌が悪くなるのが分かった。
「あ、そう言えばこの前のプロジェクトを誉めてました。ああいうのは佐藤課長にしか出来ないな、流石だって」
空気を悪くしたくなくて、思わず適当なウソをついてしまった。僕の言葉が予想外だったようで、佐藤課長は黙って横を向いた。横顔の耳が少し赤いのは気のせいか。
挨拶を済ませて席についた僕に、隣りの席の女の子が出張みやげのお菓子を勧めてくれた。
名古屋名物の味噌キャラメル。思わず遠慮すると、誰も食べてくれないんですよと、彼女は口を尖らせた。
「僕も前にウケ狙いで買ったんですけど、超不評でしたよ。山田課長だけ気に入って食べてくれましたけど」
山田課長の名前を出すと、彼女は慌てたように唇に指を当てた。ちらりと佐藤課長の方を見ると、課長は一瞬目が合ったのを誤魔化すように咳払いをした。

「あ、久しぶりだね。佐藤さんに苛められてないですか?」
社員食堂で山田課長に声を掛けられた。
人事異動から数週間が過ぎて、僕は新しい環境にも馴染んできた。佐藤課長は何かにつけて山田課長の事を聞いてくるが、天敵の元部下だったからといって僕を苛めたりするような人ではなかった。むしろ部下思いで尊敬できる人だと話すと、山田課長は意外そうに首を傾げた。
背後で聞き慣れた声がして、僕は振り返った。噂をすれば影―出張から帰ってきた佐藤課長だった。隣りに座る山田課長を見てふんと鼻を鳴らした後、僕の方を見て言った。
「お前が作った資料、役に立ったよ。ありがとな。みやげを買ってきたぞ」
テーブルに置かれたのは、お好み焼きせんべいと…味噌キャラメルが2箱。
あれ?大阪出張なのに?
「…多いなら誰かに分けてやれ」
佐藤課長はちらっと山田課長を見たが、山田課長は目も合わせない。
佐藤課長が立ち去った後、当然の流れで味噌キャラメルを山田課長に渡すと、山田課長はありがとうと苦笑した。
「来週私も福岡に出張なんですよ。お礼におみやげ買ってくるけど、何がいいかな?…せっかくだから、4課の人たちにも分けられるものにしようか」
山田課長はそう言って少し気まずそうに目を逸らした。
あれ?

タイプの違う2人は、実は案外似ているのかもしれない。

デレが分かりやすいツンデレと、デレが分かり難いツンデレ。

…とりあえず、僕をダシに使うのは止めて欲しいと思った。