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潔癖症だった攻め

「お前がはじめてなんだよ。家の中まで入った同業者って」

 家に招かれて、リビングまでの少しの距離を移動している途中で、ぽつりとそうこぼされた。
何でも前野曰く、他人にトイレを使われたりするのが嫌なんだそうだ。
へえ、と相槌を打って、右手で座るよう促された場所に着席する。
「茶いれてくる」
「あ、いいのに別に」
「うっせー遠慮すんな! 緑茶でいい?」
「なんだよそれ、じゃあお願いします」
妙なツンデレらしき反応に苦笑で返すと、前野は満足げな表情を見せてキッチンに消えていく。
思わず部屋を探ってしまいそうな視線をどうにかおさえ込んで、彼の帰還を待った。
「そういや前野さー」
「なにー?」
「お前、潔癖症なの?」
「あー、ちょっとあるかもねー。ぶっちゃけ他人に自分のもの触られるのあんまり好きじゃない」
あらかじめ用意してあったのか、1分ほどで彼が戻ってくる。
俺の目の前に湯飲みを置いて、そのまま俺の正面に腰を落としつつ、飲め、と無言で促してきた。
彼の指示に従い、ずっ、と音を立ててお茶を飲む。いれたてだからだろう、熱い。
あっちーな、と思いつつ飲んでいると、じっと見つめてくる視線を感じ、顔をあげる。
すると前野は目をそらすこともせず、俺に穴があいてしまうんじゃないかというレベルで視線をよこしてきた。
「何だよ」
「だからかもしれない」
「何が?」
「だから、お前が他人に触れられるの見ると、すげー嫉妬しちゃうのかも。汚い手で触るなーっつって」
「俺はものじゃありませんー」
「茶化すなよ」
誤魔化しの一言であったのを容易に見抜かれ、彼のなまめかしい低音がずしん、とのしかかってくる。
細い、下手したら女性みたいに綺麗な指先はいつもより力強く思えた。
それが俺の頬に伸びてきて、ゆっくりと肌をなで上げる。
ぐっと目を細めると、呼応するように前野は微笑んだ。
「お前は俺のだから。簡単に他の奴に触られないでね」