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似た者同士

「なあ、徹平」
耳の後ろで名を呼ぶ声がした。暖かい。人間の体温は心地が良い。
「何ですか、先輩」
変わらぬ体勢で俺は返事をする。腕の中にいる人は一寸の身動ぎもせず、
ふたりぼっちだな、と短く息を吐いた。
この人はいつも、考えて考えて結論が出た後にどうでもいいような台詞を口にする。
そしてそのどうでもいいことが、きっと一番掬い上げてほしい部分の薄皮一枚こちら側にあるのだ。
俺はあえてそれを拾わない。この距離感が俺達には必要で、越えてしまったが最後、
只でさえ足場のない関係はどうしようもない傷口の舐め合いになるだろうことは間違いなかった。
そして、俺がそれを知っていて解っていてしないということを、この人はよく理解している。
「‥‥狡い人です」
ふう、と今までに数巡は廻らせている思考をもう一度なぞってから溜め息を吐くと、
彼はゆっくり身を起こした。
同じような焦げ茶の瞳に自分が映る。同意と謝罪の言葉が紡がれる前に、俺はその唇を塞いだ。