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ツンデレ同士

「何、こんな時間に。」
ほろ酔いの俺をそう言って迎えたのは、眉間に皺を寄せた恋人だった。

「終電なくなってさ、タクシーなら俺の部屋よりこっちのが近いんだよ。」
突然悪かった、と言い訳する俺に、恋人は容赦がなかった。

「野宿すればいいのに。」
「……何が哀しくて誕生日にホームレス体験せにゃならん。」
「何事も経験だよ。これでまた一つ寿命に近づいたわけだし。」
「お前、おめでとう位言えねーのか。」
「こんな時間まで遊んでくるやつに言うおめでとうはないね。」

恋人の口調はあくまで軽いが、どうやら結構怒っているらしい。
くりくりとした大きな瞳は全く笑っていなかった。

「お世話になってる上司がご馳走してくれるって言うの、断れないだろ。」
言い訳のような事情説明をしながら、水を取り出すために冷蔵庫を開ける。
と、綺麗にリボンのかかった箱がど真ん中に鎮座していた。
そう、それはどう考えても、誕生日ケーキだった。

そりゃ不機嫌な筈だ、と内心頭を抱えながら呆然としていると、リビングから声がした。深夜番組に夢中な彼は、俺が冷蔵庫の中を見た事には気付いていないらしい。

「でも残業終わってから飯食って飲んでって、どこの店?会社の近くあんまり良いとこないじゃん。」

「あー、ほらこないだお前とも行ったじゃん。アンチョビのピザがウマいとこ。」
あぁ。と納得したような返事のあと、
「あれ?」
という声がして、しまったと思った。
案の定、にやにやと笑みを浮かべた男が近づいてくる。
「あそこからって、うちのほうが近かったっけー?いつの間にそんなルート出来たのかなー?」
「……うるせー。」
「誕生日に僕の顔が見たかったって素直に言ったら?」

そんな恥ずかしいこと言ってたまるか。心のなかで呟く俺に、すっかり機嫌の治った恋人はニヤニヤ笑いをやめない。

「全く、昔っから素直じゃないんだからもう。仕方ないから僕1人で食べる為に買ったケーキ、ちょっとだけあげても良いよ?」

「……お前もたいがい素直じゃないな。」
「何か言った?」
鼻歌混じりに冷蔵庫を開ける恋人に、思わず苦笑した。
意地っ張りはお互い様だ。
END