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「ほらね」

放課後の教室から、下校していく女子テニス部の白井さんを見送っていたときのこと。
センチに浸っている僕の元へ、さして仲良くもない中高とクラスメイトの上原が来た。
いやなタイミングだ。
「ほらな。須田、やっぱりフラれたろ」
ニヤニヤと笑って、どこか嬉しそうにも見える。

上原の勘はよく当たった。
天気や席替えやどこの野球チームが勝つかとか、僕がフラれるとかフラれるとか。
その度自信満々な顔をしては、強気な態度で僕をからかう。
「懲りないなぁ須田も」
「上原が"絶対フラれる"とか言うからだろ、暗示じゃないかあんなの」
勘だかまぐれだかに責任を求めるつもりもなかったけれど、さすがに中学から3人連続で当てられるとへこむし腹がたつ。
今日も今日とて、僕が白井さんに放課後の約束を取り付けたのを上原曰く"偶然にも"目撃し、「隠したって無駄だよ、告白すんだろ?」とちゃかしてきた。
あのときの表情がフラッシュバックし、なんだか胃もたれのような感覚がする。
気付かぬ間に僕は舌打ちをしていた。
「上原こそ、いつかフラれりゃいいんだ、玉砕して」
「えっ」
はじめて言い返されたことに驚いたのか、怯えるような声を上げて、上原が動きを止めた。
西日に満たされた教室の中で、心なしか顔色が悪い。
「上原?なんだ、好きな奴いるんだ?」
「え、いや、俺は…」
黙ってしまった。
それは気付いたというより気付いていたことだったので、僕は少しの澱みもなく上原の手を取った。
「須田?なにすんだよ、おい」
普段の自信満々な顔はどこへ行ったのか、不安げに僕を見る。
「…当ててやろうか。上原さ、僕のこと好きなんでしょ」
言うが早いか上原は僕から目を逸らし、点いてもいない蛍光灯か何かを見ているようだった。
睨むように見つめても、上原はちらりともこちらを見ない。
「上原ぁ」
「な、なんだよ」
「隠したって無駄だよ、僕のこと好きなんだろ?」
西日の中でもわかるくらいに上原の顔が赤くなる。握ったままの手も汗ばんできた。
じれったいので手を引き寄せて抱きしめ、そのまま上原の胸へ耳を付ける。
「ほらね」
その心臓は高々と跳ねていた。