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背中から抱き締める

風が強く吹いて、飛ばされた木の葉がはらはらと舞い落ちる。
その向こうに見えるのは広い背中だった。対して僕の、なんて小さい事だろう。
だというのに、消えてしまいそうだ、そう思った瞬間身体が動いて、彼を背中から抱きしめる形になった。
わ、と驚いたように声を上げ、びっくりしたじゃないですかと、笑いながら彼は言う。
ごめんなさい。僕は謝罪の言葉を口にして、それでも離れる事ができずにいた。
僕を守るために彼は戦って、その度に傷だらけになって帰ってくる。
本当は戦いなど好きではない事は、彼よりももはや僕の方が良く知っている。
優しい彼は、それを僕に悟らせまいと平気な振りをして、そしてとうとう自分自身を騙してしまった。
痛みはないのだという。怖くはないのだという。
けれど最初は違っていた。
彼が痛みに隠れて泣き、殺めた命に魘されては眠れない夜を過ごしていた事を、僕は知っている。
どうして僕には彼を守るための力がないのだろう。
僕にもっと力があれば、彼を傷つけることなく共にいられただろうに。
非力な僕にできるのは、ただ彼を背中から抱きしめる事だけだ。