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滅んだ民

今、この瞬間、一つの民が滅んだ


その種族は皆、特殊な力を持ち
一時は、他の種族を弾圧して回っていた

国は栄え、華々しい日々が続いたある年、彼らに虐げられた民が革命を起こした

何年にも渡る戦のなか、王者として君臨していた種族は、一人、また一人と数を減らし、気がつけば、繁栄の民は一人の少年を残し、全滅した

最後の一人の面倒を見るのは、彼を保護した研究所の職員で、まだあどけない顔立ちの新入所員だった
日々、白い壁に囲まれ、大勢の人びとに奇異と増悪の目で見られてきた少年は、青年職員の愛情に戸惑い、避ける事しか出来なかった
それでも青年が、根気よく世話を続けると、少しずつ彼らの間に会話が生まれた

それから年月は過ぎ、少年が青年となったある日、彼はポツりと呟いた

外に出たい

その、何気ない一言の願いを叶える為、所員は上司に掛け合うが、素気なくあしらわれてしまう
彼は保護すべき存在で、つがいがなければ滅びるだろう、と

憤りを覚えた所員の青年は叫んだ

「あんたらは、滅んだ鳥は喜んで放したくせに、自分達と同じ人は放せないのか!だっけ?」

「人の一世一代の名台詞を笑うな」

所員の青年は、頬の青あざを冷やしながら、憮然とした表情でボヤいた
その傍らでは、最後の民が晴れ晴れと笑っていた

自分が死ねば、己の種族は滅ぶと分かっていても、青年は所員の手を取った


二人の頭上には、ただ青空が広がっていた