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俺の子供を産んでくれ

俺の子供を産んでくれ。
「……って告白したらふられた?当たり前だろ、馬鹿」
「なんでだよ!俺の心からの想いをそのまま言葉にしただけなのに、なにがいけないんだよ!」
馬鹿な告白をしてふられたらしい馬鹿な男が、若干の涙目で訴えてくる。
なんでって、それをわかっていないところが馬鹿だというのだ。
「あのな、普通の女の子はそんな告白されたら、どん引きこそすれキュンとはならないの。なんでおまえはもっと言葉を選べないかね」
「だって、だってしょうがねぇじゃん。俺にとっての恋愛は、そういうことなんだもん。好きになった人とは、結婚して、子供産んで家族つくって、死ぬまで添い遂げたいって、俺は本気でそう思うんだもんよ」
大の男が、もん、とか言ってるんじゃねぇよ。
この男はいつもこうだった。毎回、誰かを好きになるたびに、こんなくそ重いことを言い出して相手に引かれてふられている。
それもどうやら毎回本気で言っているらしいから、余計にタチが悪い。
しかし、そのくせ、ひと月もすればもう次の添い遂げたい相手とやらを見つけてくるのだ。
馬鹿だ。この男は本当に馬鹿だ。
そして、こんな馬鹿をいつまでも長いこと想い続けている俺は、大馬鹿野郎だ。
「あーあ。俺の本物の愛はどこにあるんだろう」
「知るかよ」
俺が知りたいくらいだ。

「結局おまえはさ、誰かがずっとそばにいるって約束がほしいだけなんだよ。結婚だなんだっていうのは、ただのわかりやすい契約だ」
「うーん、そう、なのかな」
じゃなきゃこう何年も同じ馬鹿を繰り返さないだろう。
馬鹿野郎。俺ならいるのに。約束なんてなくたって、おまえがどんな馬鹿だって。俺は、いるのに。

「……俺ならさ、この先なにがあってもおまえを見放したりしないよ。ずっとそばにいる。だから」
だから女の子に重いことを求めるのはやめにして、もっとライトな恋愛をしろよ。と、そう続けるはずだった口は、目の前の男が突如、俺の右手を強く握ってきたことで閉ざされてしまった。
かわりに、目の前の男が真剣な瞳をして口を開く。
「俺の子供を産んでくれ!」
「……う……め、ねぇよ!馬鹿!」
「じゃ、じゃあ!結婚!結婚してくれ!」
「それも無理だろ、馬鹿!」
「う、えー、と、じゃあ!ずっと一緒にいて!共に白髪の生えるまで!いや、死がふたりを別つまで?いいや、死んでもだ!」
痛い痛い。馬鹿力。握られた右手が痛い。
「ずっと、俺の隣にいてくれ!」

そうか気づかなかった!本物の愛は、こんな近くにあったんだ!などとほざいている馬鹿は、ひどく嬉しそうに笑っている。
馬鹿だ。馬鹿がここにいる。
おまえも、俺も、大馬鹿野郎だ。
「しょうがねぇから、いてやるよ」
馬鹿野郎。