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くすぐりに弱い受け

―付き合ってください
―…俺のどこがいいの
―そんな、男に告白されても動じないようなクールなところが…
―…ふーん……別にいいよ

あの日から今日で3ヶ月。
いつものようにオレの部屋のちゃぶ台で、聡はレポートを書いている。
正直もう限界だった。

いい加減漫画にも飽きたオレは、ベッドに転がったまま聡の背中に手を伸ばした。
「なあ…」
肩に触れるか触れないか、ギリギリのところで聡の手が飛んでくる。
「なに。今忙しいんだけど」
振り向きもしない冷たい態度。
忙しくなくたって振り払うくせに。
弾かれた手がやけに痛い。
「なあ、お前にとってオレってなんなの?」

しまった。
つい口にしてしまった。
この手のアホな台詞は嫌いだと聞いてたのに。
案の定、振り向いた聡はものすごく不機嫌そうな顔をしている。
「だってさ、オレ達付き合ってもう3ヶ月だろ?
 キスどころか手も繋いでないっていうかオレ聡に触ったこと一回もないよ。
 図書館や漫喫の代わりにオレの部屋に来るようになっただけじゃん。
 それって付き合ってるって言えなくね?
 てか何、オレは漫喫のオーナーか何かなの?」

ダメ元で告白して、まさかのOKもらって、すごく嬉しかったんだ。
いつだって抱きしめたかったけど、聡は人に触れられるのを嫌がるから、我慢してたんだ。
嫌われないように、追い詰めないように、手を伸ばすのだって3日に1回くらいに抑えてたんだ。
なのにお前はいつもそうやってオレの手を弾く。
オレの部屋オレの前にいるくせに、まるでオレに興味なさそうに。
なんでOKしたしたんだよ。
男に惚れたアホな男への興味本位?それとも同情?

謝ろうと思った口からは、不満と疑心ばかりが溢れた。
抑えようと思ったけど止まらなかった。
そのうち涙まで出てきて、聡の顔は、能面のように表情をなくしていった。

ああもうダメだ。聡に嫌われた。

そう思ったらますます涙があふれてきて、多分オレは今世界で一番醜い男だ。

いたたまれなくなってトイレに逃げ込んで30分。
ようやく落ち着いて、オレはトイレを出た。
もう帰ってしまっただろうと思っていた背中を、さっきと同じ場所に見つけて動きが止まる。
聡は背を向けたまま、小さく息を吐いた。
「あのさ、」
「ごめん。やっぱこんな男嫌だよね。もういいよ。無理しないで」
努めて明るく言ったつもりの言葉はやっぱり震えていて、枯れたはずの涙がまた出てくる。
オレこんなに泣き虫だったんだ。いい歳こいてキメえな。
涙を拭いながら頭の片隅がぼんやりと冷静になっていた。
しばしの沈黙。
「あのさ、そうじゃないんだ。」
「何がそうじゃないんだよ。触られるのも嫌なんだろう?
 そんなのと無理して一緒にいる必要なん―」
「だからそうじゃないんだって!」
突然の大声とちゃぶ台を叩く音に、息も涙も止まる。
ちゃぶ台を叩いた勢いで立ち上がった聡は、怒った顔で突進してきた。
30センチ手前で止まって、え、あれ、止まってなくね?

「え、あ  え、今、 え?」
頭真っ白になったオレの前で、聡の顔は、みるみる真っ赤になっていった。
「だから、そうじゃないんだ。
 俺、あの、別にお前のことが嫌いなんじゃ…つーか、す…好き……だけど……」
うわあどうしよう、聡の口から好きとか初めて聞いた。
てかさっきのやっぱりき、キス?鱚?キスだよな?
衝突事故じゃないんだ。うわーひゃっほーありがとうありがとう、世界中にありがとう!
「ちょ、おい、離…っ……ひ…っ!……や、やめ……ひぅ…っ!」

「ひゃ!……ゃ………止めろよ!」
思わず抱きついて背中をなでながら頬ずりまでしていたオレを突き飛ばした聡は涙目で、かなり息が上がっている。
ちょっと煽情的すぎて暴走しそうだ。
いやいや待てオレ落ち着けオレ。
この流れでこの程度の接触でこの反応はさすがにおかしいだろ。
「……聡、もしかして、触られるの弱いの?」
肩がビクっと震えて、真っ赤な顔がゆっくりと下を向く。
「……ごめん」
消え入りそうなほど小さい声。
なんだそうか。そうだったのか。それで触られたくなかったのか。
オレが嫌だったわけじゃないんだ。
「なんだよ。最初から言ってくれればよかったのに」
ホッとしたら急におかしくなってきて、オレは声を上げて笑った。
「だって、お前、いつもクールなところが好きだって言ってたから、こんなヘタレじゃ嫌われるんじゃないかって…」
真っ赤な顔をますます赤くして言い訳をする聡。
オレに嫌われるのが怖かったとか何そのかわいい台詞。
確かにこんなかわいいなんて思いもしなかったよ。
でも嫌いになるとかありえない。
むしろますます大好きになった。
「っ…!だから触んなよ!」
散々我慢させられたんだ。
これからは遠慮なく触らせてもらおう。
「大丈夫、ヘタレでかわいい聡も大好きだよ」