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理性×本能 or 本能×理性

今さらですが萌えたので、ひとつ供養に投下します。

「つまり何が言いたいかっていうとだな。
 うちは職場恋愛禁止だ、というのもまず生徒の手前があるし、父兄の目もある。
 常に公正をおもんばかって身を慎むべき、聖職者とまでされた職業であるから、
 これは当然のことだあな。

 また、俺もお前も親や兄弟、親戚から早く結婚しろとせっつかれるいい年齢で、
 孫の顔が見たい、とか、お前にいたってはひ孫の顔が見たいばあちゃんがいて、
 その期待と義務に応えるべき身であると。

 そもそも大前提として、俺もお前も男同士だ。
 これは世間ではホモと後ろ指指される関係なわけで、ま、今時はゲイというらしいんだけども、
 その世間の冷たい目にさらされて今後を生きる覚悟があるのか、
 常に人目を気にして後ろ暗く生きていくのか、どうなんだという根本的な問題がある。
 これは難しいところだ、今、人生の大きな岐路に立たされていると言っても過言ではない。
 お前もよく考えろよ、物事を単純に見るのはお前の長所でもあり、短所でもある。

 そしてこの行為だな、ゲイセッ、セッ、セック……スには様々な危険がともなうらしい、
 だいたい生物の体のつくりとして、男女の行為は自然なものだが、
 男同士というとその摂理に反していろいろと無理があるもの……だから……だから」

「だから、いろんなやり方があるんですよ、なにもいきなり尻とか言わず、できるところまででいいんです」
 俺は愛しい先輩の頭を抱きしめた。賢くてあほなこの人が可愛い。
 裸になって、上と下になって抱き合ったこの体勢から何をグズグズしているんだろう。
「まだ悩んでたんですか? 先輩。そんで、もういい? 俺はもう待てないんだけど」
 まだ合わせたばかりの肌は乾いているものの、お互いに触れた部分はギチギチで、これから先の展開に何の疑いもない。
「お前がそんなだから俺は必死で考えざるを得ないんだよ」
「とか言って、結構その気なくせに。ほら、もういいでしょう? やっちゃいましょ」
 早く、と合わせた腰を揺すると、先輩が一瞬息を詰める気配。
 それがすごく色っぽくて、本当に理性が飛びそうになる。
「お前……したいしたいって、本能のままじゃないか」
 先輩は俺の大好きな苦笑いを浮かべ、
「……本当に、いいのか」
 と、俺の顔をのぞき込む。いとおしむような、憐れむような優しい目が、ちょっとつらい。
「いいですってば。さんざん言ったでしょうが。二年も待ったんだから。もう先輩も何にも考えないでさ、早く、しましょう? いやなんですか?」
「だから……だから、考えたんだ。いろいろ考えて、やっぱり我慢できないってわかった」

 すまん、とつぶやいた声に聞こえなかったふりをして、目をつぶった。
 先輩の固い理性のたがは、とうとうはずれてくれたらしい。
 本能のままに荒々しくまさぐられる、その手つきに嬉しくなると同時に、俺の頭は一方で冴えていく。

 俺だっていろいろ考えたのだ。
 自分にこんな性癖があるなんて知らなかったからずいぶん葛藤した。
 先輩に知られ、また奇跡のように先輩の気持ちをもらってからも、職場や身内の事情や先輩を引きずり込むことが怖くて、身もだえしない夜はなかった。

 考えて考えた末……俺は本能に流されることにした。
 考えても仕方がないほどの、この感情。
 ──人生でたったひとりに出会ってしまった。
 そうなったら、どんなに理性的に考えても、押しとどめる手段はないのだ。
 わかってしまった。
 だから突っ走ることにした。

 理性的な先輩の本能と、本能に従う俺の理性。
 ふたりで望んだ結果が今なのだ。
 俺は、目の前の愛する体に噛みついてやった。
 ふたりともが、これ以上何も考えられなくなるように。