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女装が似合う攻め×女装が似合わない受け

「お帰りなさいませ、お嬢様」
薄く整った唇から、甘く蕩けるような声が流れる。
フリフリのスカートを摘んで、軽くお辞儀をすれば、女子の黄色い声が教室に広がった。
「玲様可愛すぎるー」
「可愛いっていうより美人系!」
きゃあきゃあと騒ぐその女子達に微笑みかけて席へと案内する。
「凄えなあ…」
そんな玲也を見ながら、ぼんやりと呟いた。
「おい健太、ぼーっとしてないでこっち手伝えよ!お前どうせ暇だろ」
「うるせえ」
頼まれた力仕事をするには動き辛いが、そうも言ってられないと段ボールを持ち上げた。

文化祭の出し物でメイド喫茶しようなんて提案があったときは、こんな事になるなんて思ってなかった。
クラスの可愛い女子のメイド服やらコスプレやらが見たいからと、クラスの男は皆賛成してた。
俺も大賛成だった。
でも、お菓子やら料理やらの担当が出来る男が少なくて、
ただでさえ男女比のおかしなうちのクラスのホールには男子ばかりが残ってしまった。
それなら執事喫茶でもいいだろうに、面白がって女装喫茶になってしまった。
何人かの女子はホールでメイド服着てくれているけど、うちのメインは、もう、あいつで決まりだし。

「れ、玲様、お写真いいですか?」
「写メはお一人一回まで。当店のポラロイドでの撮影は、こちらの萌え萌えセットご注文の方へのサービスとなっております」
メニューを開いて淡々と説明しているだけなのに、女の子はうっとりとした顔で見つめている。
須籐玲也、生徒会副会長で長身美形。
今日の為に少し伸ばした髪は色素が薄くてサラサラで。
下級生にはファンクラブもいるような典型的な王子様。
去年の文化祭で付き合いたい男No.1に選ばれるし、男子に聞いた抱かれたい男No.1抱きたい男No.1のダブル受賞。
まずそんな投票しようなんて言い出した生徒会の頭がおかしいとは思うけど。
「ど、どっちもで!」
「ありがとうございます。健ちゃん、写真お願い」
「へ、お俺?」
棚の後ろでコソコソ働いていた俺を目敏く見つけた玲也に呼ばれた。
けど、行きたく、ない……なあ。
「ほい、ポラロイド」
近くのクラスメイトがにやにやしながらカメラを渡してきた。
くそ、こいつら…くそ。
「く、お…お呼び、ですか……」
短いスカートの裾を抑えながら席に向かう。
教室中の視線を感じる。
「ちょ…クク、先輩、それはないっすわ」
「な、なんで来てんだよお前ら!」
席についてパフェを食べてた部活の後輩の声をきっかけに教室中から笑い声が聞こえて、顔が熱くなった。
あいつら、今度の部活覚えてろよ。
「ほら、健ちゃん。早く撮って!」
キラキラした笑顔の玲也が俺の太い腕を掴む。
やめてよ、お前と比べられたら本当目も当てられないんだって。
小さいときは体格に差なんてほとんどなかったのに。
高校に入った途端ぐんぐんとゴツくなった俺。顔だけはどんどん綺麗になった玲也。
今日もお笑い要員でこんな格好させられてるけどさ、もう服ピッチピチだし。
絡めた腕は太さも違えば、色も。俺、日焼け凄いし。
ヘッドドレス付けた頭も、短髪で真っ黒でゴワゴワだし。同じシャンプー使ってるのに。
部活のおかげですね毛が薄かったくらいだ、いいところなんて。
「はい、こちらになります」
玲也しか目に入ってないような女の子に撮れた写真を渡し、逃げるように裏へ引っ込んだ。
「……ったくもう、いつまでこれ着てなきゃいけねえんだよ…」
積み上がった段ボールの裏に隠れて一息つく。
「あ、健ちゃん!こんなとこ居たんだ」
俺を見つけた玲也が嬉しそうに隣に座る。
「ホール居なくていいの?玲也人気者なんだから」
「えー、もういいよ疲れた。ああいう爽やかな笑顔とか向いてねぇもん俺」
自分の引き攣った頬を揉みながら、俺の肩へ頭を置く。
「そんなに似合うのに?」
「え?ホントに?健ちゃん、俺似合う?」
「うん」
頷くと嬉しそうにヘラヘラと笑い、腕に抱き着いてきた。
顔はどんどん綺麗になったけど、中身はずっとこんなんで。
「えー、でもぉ健ちゃんも可愛いよぉ!凄ぇいい!」
ファンクラブの子たちのイメージ通りのキリっとした喋り方なんてしないし、あと何故か幼なじみの俺にデレデレだし。
「……どこが…」
「えー!絶対俺より可愛いって!つかさっきさあ、この格好のまま生徒会行って下さいとか言い出した奴いてさあ、マジ意味解んねぇし」
生徒会長は玲也よりは劣るけどまあまあ男前で、
「お似合いだとか思われてるんだろ」
俺もそう思うんだけどな。
「うえぇ、もう健ちゃんまでそういうこと言うなよ。気っ色悪ぃ!アイツに抱かれるとかマジ女子って意味わかんね。
 ……あ、そういえば健ちゃんさ、なんでずっとスカート抑えながら歩いてたの?」
「え、や、だって…恥ずかしいだろ、その……見えたら…」
「……え?あ、え、健ちゃん…もしかして」
玲也の手が勢いよく伸びてきて、
「…あ、止めろ!」
抑えようとしたが間に合わず、俺のスカートは見事に捲られた。
「ちょ、ば、止めっ見んな!」
スカートを下ろそうとするが、玲也にしっかりと押さえられて全然動かない。
「……わぁ、健ちゃん、エっロぉ……」
玲也がうっとりとした表情で俺の股間を見つめている。
女物の下着を身につけた俺の股間を。
「ホントに、履いたんだ…」
小さな布地で、しかもその殆どがレースで出来たそれに収まりきるはずもなく、
それでもどうにか押し込めた俺のモノは生地の上からでもはっきり解る程浮かび上がって、
「って、え!ホントにって!え!お前?え、お前履いてないの?」
この服に着替えるときに一緒に渡してきたこのパンティを。え、履かなきゃいけないんじゃないの?
「え、てか、え?皆は?え、俺、え?俺だけ?」
パニクる俺のスカートから手を離し、スカートを捲った玲也は、グレーのボクサーパンツを履いていた。
「えええ!?お前!お前、皆履いてるからって!履かなきゃダメって!」
「ゴメンね健ちゃん。あれ、嘘」
背景に咲いた花が見えそうな程の笑顔で言われる。
「マジ…かよ……」
騙されたショックと羞恥心に顔を伏せる。
「健ちゃん、ゴメンて。いやあ、でもいいもん見れたぁ」
楽しげな声がムカついて顔を上げると、幸せいっぱいな顔をした玲也が、ギラギラした目で俺を見つめていた。
「健ちゃん、俺…我慢出来ない……」
「ちょ…おい、ここは、さすがに……」
「…じゃあ、トイレ行こ」
「っ、で…でも」
「おーい、玲也ぁ!あれ?玲也知らね?」
「え?アタシ見てないよ?」
「んだよ混んできたのにどこ行ったんだよ」
段ボール越しにクラスメイトの声が聞こえて竦み上がる。
「……ほら、もう行かないと」
「えー、嫌!」
「駄ぁ目!」
「そんな可愛く言われたら、言うこと聞くしかないじゃん」
「…だから、俺のどこが可愛いの?これだって、似合って…ないだろ」
「うん!」
「即答?!」
「似合ってないから可愛いんじゃん!そのピチピチの服に収まり切らない筋肉、恥ずかしそうな顔、もうホント堪んない!
 健ちゃん昔っから可愛かったけど、最近もうホントに可愛くなってきて…」
「ん?玲也くん?居るの?」
段ボールを向こう側からどんどんと叩かれる。
「あ。あー、今行きますよーっと」
残念そうな声を上げて立ち上がる。
「あ、健ちゃん、今日も家来るよね?」
「えー……俺、明後日練習試合あるんだけど…」
「もう今日人前でなくていいから!俺ごまかすから!」
「あ、それは助かる」
「まあ、これ以上こんな可愛い健ちゃんを他の人に見せたくないしね」
俺も見せなくないな、こんなお前。
「じゃあ、最後にこれだけ」
ちゅ、と軽く唇が触れ合う。
「よーし、いってきまーす!」
見せたくないよ、他の人には。ファンクラブの女の子とか、クラスメイトとかには。
キリっとした喋り方なんてしなくて、まあまあ変態で、つかガっチガチのホモで、バリバリのタチで、
あと何故か幼なじみの俺にデレデレのことなんて。
俺だけの秘密だ。