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ごっこ遊びはもう終わり

友人のタカに告白した。
そうしたらアイツは断るでもなく、
「俺に好きな奴ができるまでなら付き合ってもいい」
なんて言いやがった。
正直ふざけんなと思ったが、それでも嫌われる覚悟もして告白した身としては、付き合ってもらえるチャンスがあるだけ幸せだと思って二つ返事でOKした。
そんな恋人(仮)生活はほぼ何も進展することなく、しかし早半年目に突入していた。

そして俺は今日も今日とてタカの部屋に入り浸っている。
勝手知ったるなんとやらで、二人分の夕飯でも作ろうと冷蔵庫を漁っている俺の背後に影が立った。
「何食う?チャーハンくらいならすぐに」
「シュウ、話しあるんだけど」
俺の言葉をさえぎるかのように、硬い声が降ってきた。
「話し?」
振り向くと声と同じく硬い表情のタカが立っていて、その顔を見た途端、嫌な考えが頭を駆け巡った。
「ちょっとこっち来て」
促されるままソファに座ると、タカはいつもの俺の隣ではなく正面に腰を下ろした。

「なんだよ、話しって」
喉元にせり上がってくる確信のない不安と嫌な予感を抑えつつ、なんでもないように振る舞う。
「もう終わりだ」
「は?」
「だから、ごっこ遊びはもう終わりだ、って言ったんだ」
嫌な予感は的中。
心臓と胃がぎゅっと締められるような感覚に襲われる。
「ごっこ遊びって、何の話だよ」
けれどそんな予感も認めたくなくて、へらりと笑ってとぼけてみせた俺に、タカは変わらない声で終わりを告げた。
「好きな奴ができた。だから恋人ごっこはもう終わりだ」
静かな声だった。
「ぁ……そっ、か…」
沈黙の果てに、喉の奥に詰まった息をようやく声にして絞りだすが、それでもまだ息苦しくて顔を背けた。

「あー…、じゃあ俺帰るわ!」
この部屋にも、タカの前にいることすら気まずくて、バレバレに能天気な声を出して立ち上がった。
「今までありがとな!」
顔も見れず目線をそらしたまま、玄関へ向かおうとタカの横を抜ける。
が、
「ちょっと待て。まだ話し終わってない」
すれ違いざまに腕を掴まれた。
「っ!…離せよ」
振りほどこうとするが、しっかりと掴まれていてほどけない。
「おい!」
「好きだ」
「……は?」
今何て言ったコイツ。
目が点になるとは、こういう状況のことを言うのだろうか。
タカの言葉が、理解できない。
「お前の事が好きだ!だから、ごっこじゃなくて…その……」
硬かったタカの顔が徐々に赤く染まっていく。
それと同時に、ようやくタカの言った言葉を理解した俺の顔も、赤くなる。
「なっ!なん……、なんだよ、ソレ」
湯気が出そうな頭を抱えてしゃがみ込んだ俺に、小さいけれど確かなタカの言葉が届く。
「俺の恋人になってくれ」
展開に追いつけず頭はぐるぐるしていたが、俺は大きく頷いた。

それから、(仮)の取れた俺たちは、普通にチャーハン食って、初めてキスをした。