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悪落ち→救済

山岡くんは友達が少ない。
山岡くんは同級生だけど俺より一つ年上だ。
山岡くんはこの辺の男子なら誰もが名前を聞いたことがある不良、だった。

「山岡くん、これわかんねぇから教えて」

俺の言葉を聞いてしかめっ面になるいかつい顔から視線を落とせば、しっかりと前を閉めた学ラン、中にはYシャツ、いたって普通の学生服。

「……いつも言ってっけどな、俺だって頭は悪い方だぞ?」
「俺よりはマシだもん」
「つってもなぁ……おいお前ここからわかんねぇとか重症だぞ!」

不満を言いながらも机の上に広げたプリントを一緒に覗いてくれる。
そして俺の隣の席に、どかっと腰を下ろした。




小学校時代から町内で性質の悪い悪ガキと名を轟かせ、中1で既に補導歴は数え切れぬほど。
無敵の暴れん坊、なんてそのまんますぎる異名がついたが、そのまんますぎるその呼び名でしか言い表せない、その位にどうしようもなかった。
高校生の不良とも対等、あるいはそれよりも上の立場だった彼は、更に暴れまわれる場所を求め、
そして、僅か15歳で裏の社会へと堕ちていった。
けれども、所詮は中学生。
すぐに捕まり、そしてもう、補導ではすまなかった。

それが周囲の知っている、そしてつい数か月前までの俺の中の、山岡くんの情報。
今はその中に、『今はちゃんと更生しようとしている』と、『結構面倒見が良くてかっこいい』という情報がプラスされている。


「おわっ……たー!」
「あー……疲れた」

どうにか課題のプリントを終えた解放感に伸びをする俺の隣で、まさに疲れた表情でうなだれている山岡くん。

「ありがとう!もうマジでありがとう!俺のヒーロー!」

そんな俺の言葉に何故か彼はキョトンとした表情。

「……ヒーロー?」
「え、だって山岡くん俺が困ってても絶対見放さずに助けてくれるから」

一瞬ぽかんとした後、いかつい顔が笑い顔に変わった。
彼がひどく可笑しそうに笑うけれども、俺にはその理由がまったくわからない。

「なぁ、俺なんかバカなこと言った?」
「いいや、全然」

ただ、と彼は続ける。

「俺にとってはお前の方がヒーローだと思ってたから」
「へ?」

その一言に更にわけがわからなくなって首を傾げる俺の頭を山岡くんはぽんと叩き、
「お前はわからないままでいい。そのまんまでいいから」と言った。

やっぱりわからないけれど、山岡くんの目が優しげで嬉しそうだからまぁいいか。