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なんでわかってくれないんだ

入学式で松本くんに一目で惚れて、うっかり入ってしまったサッカー部。
身長活かしてなんとか一年頑張ったけどもう流石に辞めたいな、僕インドア派だしなんて思う日々。
でもやっぱ君が満面の笑みで「ナイスー!」なんて声をかけてくれる度、僕はどんどんと深く恋に落ちてしまったり。
そんなぐるぐるが2年目突入の折の春休み合宿。
男には、戦わなければならないときがある。
なんて汗臭いことを言う訳ではないけれど、人生には一度ぐらい、決死の瞬間ってのがある。
僕にとっては今日がその日、今がその時。君がその相手。
夜になってこっそり外に連れ出したけれど、なにを喋って良いかわからない。だってお風呂あがりとか破壊力高すぎんだもん。
夜風で涼む君に僕は熱くなるばかり。
「あー…ま、松本くん」
やっとかっと絞り出した声は今にも裏返りそうで超カッコ悪かった。
「んー?なに、塚くん」
ちくしょう風下になんていなきゃ良かった、洗い立てのTシャツってひどい武器。完全に白旗だ。
頭がぐるぐるするどうしよう、二人で、二人っきりでいるってもしかしてコレすごい恥ずかしいことなんじゃ、
ていうか松本くん松本くん髪切ったのすごい似合うさわやかすぎてどうしよう彼女とか出来たらもう生きていけな…あ、でも色々悩んで相談してくる松本くんとか超見たい絶対かわいい
それよかこの間をどうにかしないと今何秒黙ってんの僕5、6…6秒ぐらい黙ってんの?松本くんどうしよう松本くん松本くん松本くん、妹に言われて冬の間はリップクリーム使ってる松本くん
好きだ好きだああもうどうしよう君が好きなのに好きだから、せっかく二人きりなのに全然顔見れない松本くん君のその射るような猫みたいな目が見たいのに好きなのに松本くん松本くん。
松本くん。
「あのさ…」
「ん?」
「つ、月が、綺麗だね」
……なんで?
ああこんな、恥ずかしいぐらい素敵なことを言うつもりじゃ無かったのに。
なんでこうなるの誰か助けて松本くん。
「月?あぁ、おー!ホントだ!」
「いやあの、ちがくて」
なんでわかってくれないんだ。って忘れてた、松本くん国語2だった。
恥ずかしいよ馬鹿かよ一人でぐるぐるしてせっかくの二人きりで松本くんの顔も見れないなんてそんな根性無しに育った覚えは無いよ!いや根性無しだけどそれぐらいできるよ!
ああもう決めた、あと3秒したら松本くんの方を向くんだ、それで横顔じっくり眺めるんだ。そうだ決めた、そうしよう。
3、2、
「塚くんすげぇなぁ、月キレーだね!」
……なんで。
なんでいきなり覗き込むの、やめてよ松本くん、僕がこっそり見るだけのはずが。
どうして目が合っちゃってるの松本くん、ごめん根性無しの僕は目を逸らします。
「えー?…で、でしょ?すごい綺麗で」
「…塚くん自分で言ったのに、わかってくんないの?」
顔を上げるとやっぱり目が合って、だけどさっきと違うのは段々と君が近付いてくること。
僕はといえば「松本くんは国語2なのに」、なんて下らないことをぐるぐるぐるぐる。
ねえ松本くん。
君のハミガキ粉がシトラスだなんてたった今、初めて知りました。