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春を待つ

むかつくぐらい底冷えのする日が続いていた。
辺りは一面雪に覆われて、今までのことが嘘のように全てが白く塗りかえられている。だが、俺の腕の中にある銃は幻でもなんでもない。
昨日の激しい銃撃戦も、壕の中に並ぶシートを被ったかつての友人たちも、決して無かったことにはなってくれない。
こんな日はどうしても故郷のことを思い出す。一面に広がる麦畑とリンゴの木、暢気な牛ども、そしてあいつの栗色の髪の毛。
少しばかり頭の回転が遅い奴で、それが原因で糞餓鬼どもにからかわれてたところを、よく追っ払ってやったりしてたっけ。
あいつは元気にしているだろうか。ここには来ていないはずだ。礼状はあいつの家にだけは届いていなかった。だが、今となっては分からない。戦況も厳しくなってきた、体には問題のないあいつも呼ばれたかもしれない。
事情を知らない上官にのろまだの、グズだのとどやしつけられながら、必死で毎日を過ごしているかもしれない。はっきりしたことは、しがない一兵隊の俺には分からない。

冬なんか、さっさと終わってしまえばいい。この雪が溶ける頃には、きっとこのクソッタレな戦争も終わる。そうすりゃまたあそこに戻れる。麦とリンゴと牛と、あいつがいる、あの景色の中に。