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ノンケ親友に片思い

兄さん、お元気ですか。そちらは相変わらず暑いですか。
今日は下宿先に春日が、貸していた本を返しにやってきました。
上は白い袖なしのランニングシャツに、紺色のジーンズを履いて、
足元は健康サンダルと、いつも通りの気安さでした。
春日とオレは本の好みが似ているみたいで、
この時の本も気に入ってくれたようでした。
板塀沿いの木戸をくぐったら裏庭があって、犬小屋があって、
縁側が張り出していて、棹に干した洗濯物が揺れていて、
お世話になってる下宿先のご夫妻は旅行に行ってて、だから今日は
日がな一日オレが留守番をしていて、冷蔵庫を開いて麦茶のグラスに
氷を入れて、しま模様のストロー立てて、
風鈴がちんちろ鳴ってる下で、サンダルの足をぶらぶらさせながら、
春日とオレは本の話をしました。今度映画になるのもあって、
それは見てみたいなあと、春日は言っていました。庇(ひさし)の影が
顔に斜めに落ちていて、くっきり二色に別れてました。

もまの話はした事があるでしょうか。この地方ではムササビのことを
もまと呼んでいるんですが、ここのご夫妻が飼っている犬も、
もまという名前です。尻尾の形が似ていると仰っていたのですが、
オレにはよく分かりません。
そのもまなんですが、とりとめの無い話をして、そいじゃ帰るわ、と
春日が腰を上げて、
裏木戸に向かいかけた時に、それまで犬小屋の陰でべったり
地面に寝そべってたはずが、いきなり起き上がって春日に飛びつき、
ジーンズの脚に二本の前足で離すまいとしがみついて、
後ろ足で立ち上がり、ぐんぐん腰をつかい始めました。オレは
慌てましたが、土でズボンを汚されても、春日は怒りませんでした。
何だお前、帰って欲しくないのか、いい子だなあオイと、
もまの頭をわしわし撫でて、へっへと舌を出しているもまの横で
上機嫌にオレに手を振り、そうして帰っていきました。

もまはパタパタと尻尾を振っていました。
オレは縁側に腰掛けたまんま、
しばらく春日の去った後をぼんやり見つめてました。
春日は勘違いをしていたようですが、別にもまは春日を
引き止めようとしてあんな行動に出たのではありません。
あれは一種のマウントです。犬は自分の上位を下位の者に
示そうとする時に、相手にのっかって自分の股間を擦りつけ、
腰を振るのです、まるで性行為を見せつけるかのように。
もまはオスです。
マウントはメスにも見られますが、先程のあれは明らかにオスの行為
でした。オレが言うんだから間違いありません。

繰り返しますが、もまはオスです。毛も生えています。
オレは思いました、その滾る獣欲でもって春日を征服しなんとした
もまは、既にオレよりも遥かに良く春日の体に通じてしまったのだと。
何せもまはオレですらできなかったのに、暴力的な肉球で春日を
押さえつけ、ぶ厚い毛皮で春日を蹂躙し、
熱く涎を滴らせながら春日の肌を嘗めしだいたのですから。
嫌がる春日の悲鳴が耳に聞こえます。引き裂かれる白いシャツ、
爪跡が赤く線を引く小麦色の背中、背の窪み、履き古しの
ジーンズをずり下げて、尾骨に、尻のえくぼに指を沿わせて、
それから、それから、それから、それから!

兄さん、オレはもう色々とダメかも分かりません。
この手紙は読んだら焼き捨ててください。
焼いて、灰にして、青い空に振りまいてください。
お願いします。         次郎