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あの星取ってきて

「あの星取ってきて」
「どれや」
「あの赤いやつ」
「赤? ああ、蠍の尻尾か。あれ毒やけどええの?」
「いいよ。いいから取ってきてよ。早く」
「あのなあ、そんな簡単に言うけどな、あの蠍めちゃめちゃ執念深いの知ってるか」
「知るわけないだろ」
「いつやったかな、あいつの足一本折ったことがあってなぁ」
「は?」
「足は他に何本もあるくせに、あいつ大騒ぎしよって」
「……。足を折るお前が悪いよ」
「ほら、君、前に『蟹食べたい』とか言うてたやろ。土産にしたろ思って」
「蟹と蠍じゃ全然違うよ」
「ま、そんなわけで、あいついまだ根に持っとってな。今でも近づいたら刺そうとするんやわ」
「自業自得だろ」
「そやなぁ……うん。でも大事な君の頼みやし、取ってこよか。右腕一本失くすかもしれんけど」
「……」
「あっちの川渡って行くか。あ、途中おっさんとこ寄って何か借りよ」
「……」
「ほんならな。またちょっとの間会えんけど、あれは絶対に取ってきたるから」
「……いい」
「ん?」
「もういいって言ってんだよ」
「いや、大丈夫やって。道にちゃんと石ころ撒いていくから」
「何が『大丈夫』だ! そもそも、最近ロクに会えないから俺は怒ってんだぞ!?」
「わかっとるよ。そやから、お詫びに何でも好きなもんおごるって」
「それでまた会えなくなるとか、本末転倒だろうが!」
「あー……そう言われてみれば、そうやなぁ」
「……。お前を困らせようとした俺が馬鹿だった」
「君は馬鹿やないよ。馬鹿なのは俺や」
「……」
「困らせるのもいっつも俺や」
「…………蟹」
「え?」
「蟹を食べに行こう。勿論、お前のおごりで」
「え、それでええの?」
「蟹の方が美味いし」
「君がそう言うなら、そうしよか」
「だから、あまり遠くへ行くな。お前と俺とじゃ、持ってる時間が違うんだから」
「うん。……ごめんな」