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人間と人外

むかし、むかし、あるところに、大きな沼がありました。
沼にはいっぴきの蛇がすんでおりました。
蛇はあんまりながく生きたので、沼の近くの村人は、蛇を神さまだと思っておりました。
村人は蛇をおこらせないように、沼にちかづいたり、魚をとったりしないようにしていました。

しかし、ながいあいだに村人はだんだんと蛇のことをわすれてしまい、魚をたくさんとったり、ごみをすてたりして、沼はだんだんきたなくなりました。
蛇は村人にむかむかしたので、大雨をふらせ、村長の家をたずねて、いけにえをよこせとおどしました。

それから何日かすると、村人が沼のほとりにひとりの人間をおいていきました。
それは、とてもかわいいこどもでした。
蛇はその子をひとめですきになってしまい、あんまりはずかしくて出ていけなくなってしまいました。
雨にぬれたその子がとてもさむそうだったので、雨をふらせるのもやめてしまいました。

それで、朝がきてもその子はぶじでした。

いけにえが無事だったので、村人は「神さまなんていないんだ」とあんしんして、もっと沼を荒らしました。
蛇はむかむか、むかむかしましたが、村をひどい目にあわせると、あの子もひどい目にあってしまうので、じっとがまんしていました。

そのうち村にはおかしな人たちがやってきて、沼をうめたててしまいました。
蛇は帰るところをなくし、どんどんからだも弱っていきました。

ある月の明るい夜、蛇はそっと村へ行きました。
そして、とある家のなかに、あの子を見つけました。

蛇は庭からそっと語りかけました。

―わたしは沼にすむ蛇ですが、もうどうにもいけません。せめてあの時のいけにえにお会いしたくてまいりました。

するとその子はこう答えました。

―いけにえになったのはわたしのひいおじいさんです。

―ああ、もうそんなに月日がたっていたのですね。

それきり蛇の声はしなくなりました。

朝になり、その子が縁の下をのぞくと、いっぴきの白い蛇がむくろをさらしていました。
その子はむくろをふところに入れて、村のはずれにある、自分のひいおじいさんのおはかに行くと、おはかの中にむくろを入れました。

それからその村ではかんばつがおきなくなり、沼だったところは「蛇恋(へびこい)」とよばれるようになったのです。