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声が聞きたくて

「やあ、随分とお久しぶりの顔ですね! あれっどうして目を逸らすんですかアンタ。
別に俺に何も言わずに姿消したことなんて怒ってませんもう昔のことですし。
せっかく逢いに行ってもいつもなんだかんだ理由つけて留守だったのも怒ってません。
うん全然怒ってないよ今日帰ってくること聞いてなかったけれど怒ってないよ。
まあ、言い訳はいっくらでも聞いてあげるから言ってごらん。
黙ってないでホラ声出しな、謝りな。謝れよ。ゴメンナサイって言ってみな。
何か言えよ。五年振りなのにアンタ俺の名前の一つも呼べないのか。
……その病的な無口、来世では直るの? 前世もそう? つうか今生で直らないの?
ああああ辛気臭いな! もう召されろ! アンタなんか天に召されてしまえ!
大体アンタはどうして携帯持ってないの。このご時勢におバカさん!
毎週慣れないお手紙ちまちま書いた俺の気持ちにもなってくださいよ。ねえ。
文通しましたね五年間しましたね、おかげで筆不精が今では時候の挨拶も完璧でーす!
俺はすげぇシャベリですよ知ってるでしょう今も止まりませんよ言いたいこと山ほど!
ねえ、何か言えないのかアンタは。無口は美徳じゃなくて俺にとってはただの不細工だ。
あーあ苛々するなぁよし、ほっぺた出せ! 左向け左! レフト!
いつでも殴ってくれとはよーしいい度胸だ一発かましてくれる覚悟しろよ!」


ぼろぼろ泣きながらべらべらとしゃべって怒鳴って罵倒した挙句の果てに、
鉄拳を覚悟していた左頬には勢いよくキスが降った。
思わず名前を呼んでしまったら、ぐしゃぐしゃの顔がぱっと笑った。
「そう、聞きたかったのはそれ! アンタ最高! 前世も来世も愛しているよ! 多分ね!」
…今生で無口直すよ、と、心底思いながら抱きしめた。