冬のバーゲン
急がないとバーゲンが終わっちゃう!
こういうときにかぎって、電車が遅延するんだろう。僕は不幸だ。
駅から駆けて閉めるぎりぎり、やっと到着した。
そのまま会場内を走って目当ての店に行くと、
もう店じまいを始めていた。
「ごめんねー。かんばいしちゃったわぁ」と
うれしそうに店員さんに言われた。
がっくり。
ああ、これが僕の運命なんだろうか。
会場を出ると外は日が落ちていて、寒々としている僕に
冷たい空気が追い討ちをかけてきた。
「あれ?」
聞き覚えのある声がした。
「あ、きてくれたんだ」
「こ、こ、こんばんは!」
店長さんだ!!
「あの、あの、お疲れ様です。
冬のバーゲンは今日でおわりなんですよね?!」
「うん」
店長さんはにっこり笑った。
「さっき行ったら完売してましたねーすごいですねー」
「まあまあ今年はよかったかな。
あ、そうだ。ねえよかったら、これから打ち上げあるんだけど、来ない?」
き、き、キターーー!!!!
「はいはいひあああはい!!」
店長さんに憧れて通い続けて1年。
やっと顧客と認められたんだ。
やっと、やっと、お近づきになるチャンス到来!
「じゃあ○時にこの店なんだけど、僕の携帯の番号を、、」
「は、はい!」
さっきまでのことは全部無し。僕は幸福です。
最終更新:2012年02月09日 18:58