番長×生徒会長

すっかり暗くなった学校からの帰り道、僕は少しだけ遠回りをして土手の道を通る。
いつも取り巻きのような連中に囲まれている彼が、たまに、そこに一人でいることを知っているからだ。
いた。
何をするでもなく、少年はうっすら雪の積もった河川敷を眺めている。
「よう、会長さん」
音に気付いた彼が振り向き、声を掛けられて、僕は自転車を降りた。
「こんなところに座っていたら冷えるだろう」
「別に」
「…僕を待っていた?」
「俺に会いに来たんだろ?」
あっさりと返される。顔色ひとつ変えない彼に、こっそり舌打ちする。

「随分遅いお帰りなんだな」
「生徒会の仕事で」
「こんな時間までよくやるもんだな。…ゴッコ遊びみたいなモンをさ」
「……まるで」
「あん?」
「いや、」
「言えよ」
「…まるで、君らのやっていることは、ゴッコ遊びじゃないような言い草じゃないか」
伸びてきた腕に胸元を掴まれ、引き寄せられる。だが息が詰まる程の強さではない。
「喧嘩ごっこだと、そう言いたいのか?」
「怒るなよ、つっかかってるわけじゃないんだ」
そう言いながらも、彼が本気で怒っているわけではないのは分かっていた。
「仕方ないじゃないか。君がどうかは知らないけどさ、社会の真似事をするのが学生ってもんだろ。何か、ゴッコじゃないことってあるか」
顔を背けるのを我慢してまっすぐ見返していると、彼はふんと鼻から息を抜いた。
胸元を掴んでいた手が離れ、顎の辺りへと移動する。頬を撫でられて、僕は呟く。
「これだってそうだろ。ゴッコだ」
「黙れよ」
終始余裕のあった彼が、さっと眉をひそめる。
急に何だっていうんだ。本気の不機嫌を感じて僕は肩をすくめた。


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最終更新:2012年02月09日 18:50