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ツンバカ

川上はちょっと面白い。好きな子いじめをしてしまう小学生が、
そのままでかくなったようなヤツだ。好きだからついツンツン
してしまう、わかりやすくて面白い。
俺は、川上にツンツンされている。
一回生の時サークルの飲みではじめて顔を合わせたとき、
川上は俺を見ていきなり真っ赤になった。
それからずっと、俺は川上にツンツンされているのだ。
ツンツンする割に、川上は、なにかっていうと俺にひっついている。
履修だって合わせてくるし、合宿の班だって同じにしたがる。
飲み会の席でも近くに陣取る。俺の部屋は三次会あたりの会場になることが
多かいんだけど、川上は絶対ついてきた。そして、ツンツンする。
出会って三年、俺はツンツンしながら側にいる川上と、なんとなく過ごしている。

川上と喧嘩をした。
喧嘩なんかするつもりじゃなかったんだけど、いつものように
ツンツンする川上に、ちょっと言い返してみたら、川上が、もう絶交だ
って言って勝手に怒ってしまったのだ。顔を真っ赤にして、勢いよく踵を返し、
ずんずん去っていく川上を、絶交とか言われたの本気で小学校以来だと
思いながら見送った。

それからほんとに川上は、俺に近づいてこなくなった。
三日も四日も経って、川上が側でツンツンしてないと、
ちょっと拍子抜けするくらい味気ないことに、俺は気づいてしまった。
大学の近所のコンビニに、学校帰りにいつものようにバイトに出かけ、
いつものようにレジ打ってるときに唐突に。
「案外癖になる味だったんだなぁ、あいつ」
心中でしみじみと俺は呟いた。

バイト上がりに、川上に電話してみた。
ワンコールくらいで電話に出た川上は、
『なんだよ、絶交だっていっただろ!』
ものすごい勢いでそう言い放った。
「そうだけど、なんか川上にあいたくなった、よくわかんないけど」
『なに馬鹿なこといってんだよ』
電話の向こうの声は、ツンツンしている。いつもの川上だ。
「だよなぁ。ごめんごめん。もう切るわ、悪かった」
川上が押し黙る。しんとした気配が、広がっていく。
じゃあな、と言って、俺は電話を切った。
そのまま駅に向かって電車に乗った。俺の家は大学から二駅離れているのだ。

電車を降りて、改札をでたら川上がいた。
「川上」
近寄りながら声をかける。ふりむいた川上は涙目だった。
「なにしてんのこんなとこで」
「……駅からの道順わかんなくなってたんだよ。だからここで」
涙目の川上は、やっぱり涙声で言った。
顔がおもわずほころびそうになるのをこらえ、真顔で俺は
「どこにいこうとしてたんだよ、川上」
そんな風に、白々しくたずねてみた。
川上が悪い、こんなに意地悪心をくすぐってくるヤツはそうそういない。
「しらねーよ、バカ」
いつかと同じように真っ赤になった川上は、ごしごしと目を擦って、
ぷいとそっぽを向いた。
バカはお前だろ、川上。
涙目、涙声の川上の手を握ってやる。
ふりほどかれると思ったのに、川上はおずおずと手を握りかえしてきた。
馬鹿な川上。かわいいヤツ。