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dat落ち

「それじゃ!名無しにもどるよ」

そう書き込んだ君は、それを最後に本当に現れなくなった。
見慣れたトリップはもう使われないんだろう。


『ボロ原付で日本を一周するスレ』
そんなスレがたったのは、一ヶ月くらい前だったか。
「スペック 男 18歳 童貞 原付歴1年半 相棒もうpしとく」
お決まりの文句とともに書き込まれていたURLをクリックすると、
そこにはホントにボロとしか言いようがないカブが
どこか頼りない後姿の君とともに写真でうpされていた。
君は左手を細い腰に当てて、右手は人差し指を伸ばしたポーズで立っている。
その指先をたどると『名古屋駅』の文字が見えた。

細い体の君と、ボロボロのカブ。

「無理だってwwwwwもう止めとけwwww」
そう煽られる事もあった。
でも君は気にする様子も無く、旅を続けた。
そしてその様子をスレッドに書き込み、
時には美しい写真を、時にはちょっとバカな写真を、
うpしていった。

俺は毎日そのスレに通った。
君の書き込みがとても面白かったし、
何より、自分も旅に出ているような気分になれたから。
ともに笑い、ともに悩み、ともに迷い…
そう、まるで君と一緒に…

永遠に続くように思った旅路は、長くは続かなかった。
「この調子で行けば、明日には名古屋につくかもしれん」
その書き込みに、俺は胸を締め付けられた。
君との旅も、もう終わる。
「支えてくれたスレ住人達よ!アリガ㌧!
 駄目かと思った時もあったけど、
 もまえらが励ましてくれたり、助けてくれたからココまで来れた。
 皆!でら愛しとるよ!」
君の書き込みを読んだ瞬間、ブラウザが滲んで見えなくなった。
マウスを握る手が震えた。

俺…君と旅をしてる間に君を…

そんなキモイ事、書き込めるはず無かった。
立ち止まった俺に、君は気付くはずもない。
君は最後に名古屋駅の前でカブに跨り、
大きくガッツポーズした写真をうpすると、
旅の余韻に浸る間もなくスレから消えてしまった。

残された俺は、dat落ちと書かれたスレタイ一覧を見ながら、
目から汗を流してた。

「はは…俺きめぇ…超きめぇ……っ」