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801リク「あなたの好きな場所」

好きな場所「オフィス」

ああ…疲れた…。
伸びをすると、全身が軋みをあげる。
目がかすんで、視界がハッキリしない。
今は決算期で、一年で一番忙しい時期だ。
時計は日付を越えようとするところまで迫っているのに、まだまだ書類の山は減る気配が無い。
…まあ、オレが要領悪いだけなのかもしれないけど…
現に同僚達はとっくに帰ってしまっている。
今このオフィスに残るのはオレと…部長の二人だけ。
部長もオレに合わせて残ってくれているんだろう。いたたまれない気持ちになった。
「部長…」「なんだ」
朝は一番に出社してきて、夜は必ず最後まで残る。部長はそういう人だ。
こんな時間だと言うのに、スリーピースのスーツにも、バックスタイルにした髪形にも一片の乱れも無い。
クールビューティって言葉、部長みたいな人の為にあるんだろうな…それに比べて、俺は…
「おい」
気が付くと部長が怪訝な目でこちらを見ている。
「何か用があるんじゃないのか?」
「は、はいっ!その…」
深い藍を湛えたその瞳に射竦められるとどぎまぎしてしまう。
「…今日はもう、帰ってくれてもいいんだぞ」
「い、いえ…もう少しだけ、キリのいい所まで進めたいんです」
「ならば少し休んでこい。…ひどい顔をしているぞ」
部長の優しさが身にしみる。言い方は少しぶっきらぼうでも、本当に部下の事を気に掛けてくれているのだ。
その好意にありがたく甘える事にした。

ふう…
缶コーヒーを片手に、休憩室に入る。
どうも目が乾いて仕方ない。ずーっとPCとにらめっこだもんな…
コンタクト、外すか。今日は眼鏡も持ってきてるし…

「部長、戻りました」
「ああ…… !!」
部長が目を見開いて、オレの顔を凝視している。
え?なんだ?オレの顔、何か付いてる?
部長がこんな風に感情を動かすところは初めて見た。
手にした書類を机に無造作に置き、つかつかとこちらへ歩み寄ってくる。
「君…」
え、何なんだ?オレ、何か悪い事しちゃったかな?あ、あのミスとかあの時の失敗とかバレたとか!?
「その眼鏡は一体どうした」
「……へ?」
頭の中が整理できない。今、部長は、なんて言った?
「眼鏡だ。…さっきまでは、そんなものしていなかっただろう」
「あ、ああ…これは。コンタクトが剥がれてしまって…」
すい、とブリッジに部長の手がかかる。こんなときでも、オレは部長の手の美しさに見蕩れていた。
距離を詰められて、香水の香りが鼻腔をくすぐる。ラストノートの甘く深い香りと、部長の…
…オレは、何を考えているんだ?というか、部長は何をしたいんだ?
「君は…」
部長は、とても切なそうに、笑った。
「君は、どこまで私を困らせたら気がすむんだ」
強く腕を引かれ、部長席の裏に連れて行かれる。そしてそのまま…床に押し倒され、抱きすくめられた。
疲労と驚きと混乱で何が起こっているのか全く理解できない。
でも、この人になら…何をされてもいいと思った。

朝の光で目を覚ますと、オレの上着はきちんとたたまれ、身体には毛布がかけられていた。
さらに机の上にあったはずの書類は全て処理されていた。そして…
部長は椅子をベッド代わりに、眠りについていた。
…この人の寝顔なんてものすごくレアなんじゃないだろうか。
今日も頑張ろう、と思った矢先に腰を鈍痛が襲う。
…今日も仕事にならないだろうな。特に…
こんな部長の下では。