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この想いを詩歌に乗せて

ぼんやりと窓辺に肘をつき、格子の隙間から朧月を見上げる。
聞こえるのは秋風が草木を揺らす音と、虫の鳴き声。
『お前をそこから連れ出して、色んな物見せてやるからな』
そう言った彼の笑顔が思い浮かぶ。
けれど、そんな夏のあの日から、彼は一度も姿を見せない。
「飽きられましたか…ね」
ぽつりと呟いた声は、たいして大きくも無いのに響いて聞こえた。

彼が現れた切っ掛けはよく覚えていないが、まだ雪のちらつく季節だったのは覚えている。
辺りが寝静まる頃に現れては、外の世界の事をまくしたて、私の話を『変なの』と眉根を寄せては聞いていた。
続けて訪れる日もあれば、暫く顔を出さない時もあったが、ひとつきも空いたことなどはなかった。
そんな彼が現れない日を指折り数えては、ただ、溜め息を漏らすばかりだった。
だがそんな日々も長く続きはしない。
明日、雨神へ人身御供としてこの身を差し出さなければならない。
変わり病に蝕まれた身には、それ以外の道は無かった。

「もう一度、逢いたかった…」
言葉と共に、涙が零れた。

もしも彼が再びここに現れたら。
そう思って、文を格子に結んだ。
この想いを詩歌に乗せて、君に届け、と。