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俺が君を壊しました

 俺が君を壊しました。

「――実は……その、お前に話したいことがあるんだ。聞いてくれないか」

 その言葉を聞いた時、俺は心から歓喜しました。
 だって君の顔は仄かに赤らんでいて、恥ずかしげな目は俺を見るに見れないでいたし、それは恋心を含んでいることを疑うべくも無かったのだから!
 俺はもう何年も前から君に恋をしていたけど、臆病者だから、恐くて、怖くて、君の一番近くにいる自覚はあったけど、俺は最後の決定打を打つ言葉を告げることができないでいたのです。
 だが俺だけじゃなかったんだ、君も同じ想いを持っていたんだと、俺は本当に、いつもの無表情がだらしなく崩れたのを自覚しながら、情けなくも喜びました。
 だから俺は快諾しましたよ。俺と君以外誰もいない部屋で、俺は君の話を聞くことを。

「……お前の後輩に、秋山光というのがいたろう。――恥ずかしながら……自分でもおかしいのは分かっているんだが……」
「ああ、男相手に初恋なんて、……自分でもどうかしていると分かっているんだ。だが、」

 やはり、君の目は恋をする目に違いなかった 。
 ただ、その相手が俺じゃないなんて……本当に予想外でした。しかもまさか、相手が秋山の馬鹿だなんて。

「相談に乗ってくれなんてことは言わない。親友のお前にだけは、隠し事はしておけないから」

 俺はその時、どう答えたんだったかはよく思い出せません。
 親友。親友。
 とても痛い言葉だと思いませんか。俺を狂わすに足る酷い言葉だと思いませんか。
 でも君は何回も何回も俺に言います。親友だって。
 暫くして、俺は耐えられなくて、もう止めてくれと君に言ったのは覚えています。

 止めてくれないなら俺はお前に何をしでかすか分からないぞとも言いました。
 彼は次の瞬間、床に倒れていました。
 屈強そうで美しい身体は簡単に倒れないはずですが、火事場の馬鹿力とでも言うのか、案外簡単に俺は君を押し倒すことができたのです。

「うわ! 痛…っ、なに、貴人!? 」

 君の訝しむ声、君の悲鳴、君の身体が軋む音、君の泣き声、君の鳴き声、君の笑い声、君の表情も覚えています。
 自分の言葉ならともかく、君の言葉や君の仕草は、一つとして忘れることはあり得ません。


 色々ありましたが、君は今や、俺と共にいる。今の僕にはそれだけが重要で、あとはどうでも良いことなのです。


 俺と君以外誰もいない部屋で、俺は君を壊しました。
 もしかしたら、俺も壊れたのかもしれません。