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同情でもいいから

「痛い」
「ちょっとは我慢しろって」
「だって、痛いもんは痛いの」
「わかったわかった。ていうかな、てめぇなぁ、いいかげん学習しろっつうの」
 むくれた頬が赤い。溶けた氷嚢を外すと、すでにうっすらと青く腫れ上がっている
「まったく毎度毎度飽きもしねぇで、もっとロクなやつと付き合えよ」
 言いながら、手の甲に絆創膏を貼っていく。
 こいつの薬指には刺青が入っている。鎖でできた指輪。
 昔はピアスだって嫌だって言ってたくせに。
 "お友達"に進められて入れた、って、あっけらかんと言いやがって。頭悪すぎるだろ。
「ほっといてよ」
「ほっとけるか、馬鹿」
 顔のすり傷やらに薬を塗っていく。ああ、何でこう手馴れてんだ、俺?マジ勘弁して欲しい。
「もう帰っていいよ」
「自分から呼んどいて、その態度はねぇだろ」
「帰れよ」
「帰りません」
「つうか、さぁ、もうむしろ何で来たの?ってレベルなんだけど」
「は?」
 あ、ごめん今マジでむかついた。
 いくらお前でも言っていいコトと悪いコトがあるんだぞ?
「おまえ、今日バイト入ってんじゃん」
「うん」
 お前が替わってくれって言ったもんな。
 職場が同じでなけりゃ、こんなやつと…
「なのにおれのほうに来るとか、ちょっとおかしくね?」
 こんな面倒なヤツと出会ったり、しなかったんだろうな。
「……てか、さぁ、いっつも、おれが、怪我して、…おまえの事、呼ぶじゃん」
「うん」
「いっつもすぐ来てくれんの、何なの?
 夜中とか明け方とか昼とか夕方とか夜とか、飛んできて、
 おれが泣いたり、おかしくなったりしてもさ、ずっと一緒に居てくれんじゃん。
 おれが居てって言ったら、いつまでだって居てくれんじゃん。
 あのさ、前から聞きたかったんだけど、おまえっておれの事、どう思ってんの?
 言っとくけど、おれ-」
「だから何だよ!」
 しがみ付くように細い体を抱きしめる。
 俺が許されてるのはそこまでだから、だから思い切り抱きしめる。
 聞きたくない。だって知ってる。こいつが誰を好きなのかとか
 どうしていつもいつも傷ついた後に俺を呼ぶのかなんて
 そんなの、ずっと見てたらわかる。
「世話ぐらい焼かせろよ…」
 肩に乗った顎が、少しだけずれる。胸の方に。
 少しだけ、こいつが今どんな顔をしているのか気になったけど、体を離すのはやめない。
 俺の顔だって見られたくない。
 タバコの匂いがする。大嫌いなあいつの匂い。
 今度同じのを買って、こいつの前で吸って見せようか。