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抱きしめたら離したくない

「行くな」
 綺麗な虹色の髪の毛が、青年の肩口に埋められた。特別な役割と運命を背負う虹色が、なぜこんなにも普通す
ぎる自分を思ってくれているのか、最後の最後までわからない。
「行くな!」
「無理だよ、僕が行かないと。解ってるだろ」
 青年は冷たく身を離そうとする。
 彼らの所属する軍隊は壊滅寸前で、まともに機動兵器を動かせるのは青年と虹色の彼しか残っていない。
「君は行く。僕は食い止める、ああ、いい年した男が泣くなよ」
 ぎゅうと抱き締めてくる腕が苦しい。押し殺した嗚咽が体に直接響いて、青年まで悲しくなってきてしまう。
「離せよ、くるしいよ」
「離したら、お前が行ってしまう」
 どおんと基地が揺れ、照明が落ちる。いよいよ敵が迫っている事が、青年を焦らせる。隠し持っていたナイフ
で虹色の腹を突き、そのショックで外れた腕から走り逃げ出す。あの程度の傷だと、彼の体なら五分で治るだろ
う、ある意味厄介な体質だと思う。
 擬態用のスーツを頭まで被りスイッチを押すと、見る間に青年は虹色そっくりになった。そして虹色とお揃い
の機体に乗り込み、目を閉じて一瞬彼の無事を祈った後、蜂の様に群れる敵軍へと青年は真っ直ぐに突撃していった。