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彼のことも彼女のことも好きだ

拳が震えている。
男らしい無骨な指がぎゅっと丸まっては時折思いあぐねたように緩んで、ジーンズを爪の先で引っ掻くのは彼が何かを我慢している時の癖なのだ。
「……もう限界だ。」
……あ、やっぱし。ついに決壊か、そうか。
「あのな、俺はお前の優しいところを尊敬してるんだ。」
ふむ。上げてから落とす作戦か。

「……だが、これだけは言わせてくれ。いや、言わせろ。恋人とのセックスの最中に!実の妹の自慢をするバカがどこに居るか!いや居ないね!お前はデリカシーを母親の腹の中に落としてきたのか!?」
エクスクラメーションマークだらけの威勢の良い啖呵とは裏腹に、彼の視線は落ち着きなく宙を泳いで俺と目を合わせてくれない。
きっとヨソの女でも男でもない、ただの妹に嫉妬するような自分が後ろめたいのだ。あなたはそういう人だ。

だが待ってほしい。
ならばあなたは俺に妹を愛すなと言うのか。つぶらな瞳はチワワよりも愛らしく、ほっそりとした脚はバンビよりも華奢で、おまけに兄想いの心は清廉で聖女マリアのごとく。
俺の妹がこんなに可愛いはずが有るんです。何故かって俺の妹だから。
バレンタインには手作りのチョコだってくれるのだ。ちなみに舌触りはことごとく水気を奪われた砂漠の砂のようだったがそんなことは問題じゃない。
それにいくら妹が天使のように可愛いからって、所詮家族ですよ。結婚できる訳でもないし……、
「俺ともできねえよバカ!」
あ。声に出てた。ついでに頭目がけて豪速のクッションが飛んできた。

広い肩を縮こめて、このまま地面にズブズブと沈んでいってしまいそうな勢いで俯く彼は怒っているのか悲しんでいるのか分からない。
かわいい人。俺がキスしたいのはあなただけですって、言ったらどんな顔をするだろう。……すみませんちょっと嘘つきました。おでこにおやすみのチューは正直捨てがたい。

ええと、とりあえず今夜のディベートの議題inベッドでは決まりましたね。
家族愛と愛の違いについて、カラダでレクチャー。今夜は教授って呼んでね。なんちゃって。