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探偵と○○

探偵というものは、概ね殺人事件に巻き込まれたりはしない。
旦那の浮気調査が一番多い。探偵にとっても金をよどみなく出してくれる美味しい仕事だ。
今日も俺は男の後をつけ、写真を撮り、報告書を作成する。奥さんが沢山慰謝料をとれるように。

「浮気しているかどうかはわかりません。でも怪しいんです」
その女性はやつれた顔で事務所に来た。おとなしそうな控えめな人だった。
短い爪の少し荒れた手だった。微かに見えたカバンの中身は整理され無駄なものはなかった。家事をきちんとしているタイプだ。
女性としての魅力もないようには思えない。こういう女性でも幸せになれないというのは残酷だなと思った。
「お恥ずかしい話ですが夫婦生活も全然なくて…。このまま私の人生が終わっていくのかと思うと悔しくて…」
「わかりました。全力をつくします。それでご主人の行動で怪しいというのは」
「外でシャワーを浴びていて…ホテルの領収証もありますし…」
「ああ、なるほど」
「でも、おかしいんです。いけないとは思いつつも携帯をみてしまったんですが、形跡がないんです。
事務的なメールばかりで…。女の匂いがしないんです」
「上手な人はいますから」
「主人はそんなに完璧な人間ではないんです。でも何かがチグハグで」
話をひとつひとつ確認しながらメモをとった。
取りながら俺は自分の体温が背中から下がっていくのがわかった。

「これが主人の写真です。よろしくお願いします」
差し出された写真には俺のよく知っている男が写っていた。ただ妻帯者だとは知らなかったが。
「では、また追ってご報告しますので」
彼女を送り出してからため息をついた。
そりゃあ女の匂いはしないだろう。浮気相手は男なんだから。

さあ、どうする。何も言わずに証拠を揃えて破滅に追い込もうか。それとも救い舟を出して続けるか。
タバコを吸いながら思案した。携帯に何も知らない男からの電話が来るのはもうすぐだ。