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歯型

そんなに弱りきるまで根詰めなくってもいいと思う。
1週間ぶりに連絡が取れたと思ったら。

「…ん、あー?」
「もう、何やってんのさ」
締め切りまで何日もコタツで生活してたわけじゃないだろうな。
主人を中心にぐるりとペットボトルや弁当ガラが囲む様は
答えは1つだと言っているようなもの。
「んで、まにあったの?」
「さっき、バイク便たのんだ。ギリセーフ」
天板に頬をくっつけたままめんどくさそうに答える。
「そんなことより、あーねむい。はらへった。のどかわいた。だりぃ」

きっと食料尽きてると思って買い物してきて正解だ。
でも残念ながらお茶系ボトルは買ってない。
コタツといったらミカンが正統派だけど、ここはあるもので我慢してもらおう。
さっぱり使った形跡のない流しに立って買ってきたリンゴを適当に洗う。
「これでも食っとけ。一日一個のリンゴは医者いらずっていうし」
剥かないままのリンゴを差し出す。
「まんまかよ。ツカエネー奴」
だれた格好のまま一口かじって「やっぱ寝る」と床に転がった。

まったく世話の焼ける。
押入れから毛布を引っ張り出して肩を覆うようにかけてやる。
体もうちょっと気を使ってくれ。心配さすな。バイク便の人来たらどれ渡せば。
言いたい事は色々あったけど。
何もいえないまま、かじりかけのリンゴの歯型に触れてみる。
どっかの童話みたいにさ、今ちゅーしたら起きんのかな。

我ながら馬鹿らしい。アイツはそんなんじゃないだろう。
美少女と原稿とエロゲ命のオタクに向かって姫とかキスとかありえないから。
おかしな考えを追い払うように歯形の上からリンゴにがぶりと噛み付いた。