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はきだめの鶴

ああ、むさ苦しい。
溜息を吐いて机に突っ伏した。
パイプ椅子が地味に尻に痛い。が、今はそんなことがどうでもいいくらい、鬱々とした気分だった。
右を見ても筋骨隆々とした男。
左を見てもひげ面の男。
前を見てもゴリラ顔の男。
後ろを見ても――
何を間違えてこんなところに迷い込んでしまったのだろう。
いや、自分が選んだ道なのだから仕方ないのだが、それにしても兵隊になろうという男はこんなむさ苦しい男ばかりなのか。
狭い天幕はむさ苦しい男の臭いが充満していて、それも気分をいっそう鬱にさせた。
まさか影で選考基準があって、むさ苦しさという点数が高い順に選ばれているのか。
馬鹿な考えが頭を占拠しだした時だ。
「番号012100から順に隣の天幕へ移動、そこで身体検査を受けた後、本館の大講義室へ移動しなさい」
天幕に入ってきたのは、年齢不詳の眼鏡を掛けた将校だった。
思わず顔を凝視したのは眼鏡が珍しかったわけではなく、彼の端正な顔立ちに見惚れたからだ。
切れ長の眼、艶やかな黒髪、制服に包まれた細身の体。
一般の基準では充分その将校も男らしい男なのかもしれないが、むさ苦しい男の中にしばらくいたことで俺の基準は狂っていた。
掃き溜めに舞い降りた鶴。
まさにそんな表現がぴったりだと、その時は思った。