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童顔の上司

「主任、ホント童顔でかわいいっすよね~」
「バカ言え、俺もう30だぞ」
「嘘ですよお、こんな肌もぷりっぷりで、まつげも長くて、唇ピンクで
もー先輩が女の子だったら絶対彼女にしたいっすもん!」
「お前フラレたからって俺にからむな、めんどくせーな」

顔の割に存外口の悪い上司は、ぐでぐでに酔っぱらって突っ伏した俺の頭をはたいた。
そう、俺は5年付き合ってた彼女にフラレた。理由はわからん。
主任に似てちょっと童顔で、料理がうまくて面倒見のいい子だった。
……主任に似て?いや逆だな、あいつとの付き合いの方が長いんだ、逆だ逆……。

「主任だって、彼女いないじゃないっすかー」
「俺はモテてるからいいんだよ。お前どうすんだよ顔だけしか取り得ないのに
結婚も考えてるっつってたじゃねーかよ」
「モテてる…ひどい、自慢だ…どーせ俺は顔と身体だけですよー仕事もできませんよー」
「おい身体までは言ってねーぞ勝手に付け足すな」

そう、主任はこの童顔でかわいい顔さえ除けば仕事は鬼で、部下にも自分にも厳しい会社の出世頭だ。
それに比べて俺は顔と身体だけで、営業ひとつ取っても先輩にフォローしてもらって
やっと最低ノルマをクリアできる体たらくで……
今日だって、落ち込んでた俺を、残業続きだったのに主任は家に飲みに誘ってくれた。
明日は休みだから朝まで付き合ってくれるそうだ。この上さらに優しいなんて
主任ったらもう俺の彼女像に完璧じゃないっすか。もう俺の彼女でいいじゃないっすか。
「だいたい、主任が悪いんすよ…」
「ああ?なんだそりゃ」

俺は彼女から送られて来た最後のメールを思い出していた。
『そんなに主任がいいなら、その主任と付き合えば?さよなら二度と連絡しないで』
確かに俺は主任を尊敬していた。彼女との会話も主任の話が多かったと思う。
だって主任は顔も童顔でかわいくてほっぺたもやわらかそうでまつげも長くて
さらに仕事もできて、俺の理想なんだ。
あ、そういやこれもあいつに言って怒られたな。でも大好きなんだ。

ふと静かになったので、どうしたのかと主任の顔を見ると、
酒に強いはずの主任の顔が、りんごみたいにまっかになっていた。

「……主任?珍しいっすね、酔ったんすか?」
「…え?あー、いや、その、お前……」

なぜか目を潤ませて視線を泳がせている。…あれ?これってキスされたい顔じゃね?
気が強いからなかなかしてって言い出せなくて、でもするととろっとろになっちゃうんだ。
あいつはキスが好きじゃないみたいであんまりさせてもらえなかったけど。

唇を合わせてから、上唇を音を立てて吸って、唇を舌でなぞるように舐めると
くすぐったいのか、ぴくりと抱いた身体が震える。
様子をうかがうように目を見ると、長い睫毛が震えていて、俺が見てる事に気がつくと
怒ったように睨んでから、でも恥ずかしいのかすぐ目を逸らすんだ。
それを詰るように舌を差し込んで上顎をつつくと「んんっ」とくぐもった声が零れる。
その声に煽られたように俺は唇を深く重ねて、舌と唾液をしつこく吸い耳を弄り……
「……っ、このバカ野郎!やめろっつってんらろ!」

バチーン!と顔に当たった衝撃で俺ははっと我に帰った。
ここは主任の部屋で、流したままにしていたバレティ番組の声が急に聞こえて来た気がした。
あれ?おれ寝てた?ていうか主任噛んだ?なんで唇のまわりべとべとなんすかエロいなあ…

「エロいのはお前だ!酔い醒ませ!全部口も手も出てんだよ!」
「え?あー…」

状況が飲み込めない。まっかな顔で口を拭う主任と、その主任の肩を抱いた俺と、
ちょっと勃起してる俺のちんこの因果関係がまったくわからない。
主任は童顔でも男で年上で上司でかわいくてかわいくてかわいくて……

「…そっか、童顔だからじゃなくて主任だからかわいいんだ」

ようやく腑に落ちた俺は、そのまま爆睡してしまった。
明日もまたかわいい顔が見られるのかと嬉しそうに笑っていた俺の寝顔を
まだ顔が赤いままの主任にはたかれた事は、憶えていない。