好きなところが3つある

「タケってさー、俺のこと本当に好きなの?」
「あぁ…うん。」
「俺のどこが具体的に好きなの?」

このテのウザい質問が大嫌いな俺は、アイツからそう聞かれた時、嫌々ながら答えたのを今も覚えてる。

「…あー、体の相性いいからな俺ら。お前のフェラ、マジ最高だし。」
「ふーん。…それだけ?」
「えー、あとは…、…えー、メシだな!」
「料理うまいだけの奴なんて今時腐るほどいると思うけど。…てかさ、他にないわけ?その二つだけなの?」

あーうぜー。
こいつは何を言わせたいんだよ。この俺に。
好きだとか愛してるだとかそういう暑苦しい言葉が嫌いだって知ってんだろうが。
そこらへんの偏差値低そうなバカップルどもの同類になってたまるかよ。
イラついて虐めてやりたくなったのは至極自然な成り行きだったと思う。

「いいや、三つだ。あと一つだけあるけどな、絶対教えねー。お前が死んだ後で教えてやるよ。」

意地悪くそう言った過去の俺を、だけど、今は力の限り張り飛ばしてやりたい。
俺の回答に落胆しながらも薄く笑んだトモの顔が、今もこんなにはっきりと思い出せるというのに。
…どうして。

「…まさか、本当に逝っちまうなんてな」

こんなチンケなツボに収まるくらい小さくなってしまったトモ。
変わり果てた姿のトモを抱きしめても、返ってくるのは固くて冷たい感触ばかり。
本当は、セックスでもメシでもない。
いや、それもあるけど。
本当は…

「お前がお前だから好きだったんだ」

生きて、傍にいてくれるトモだから。
ただ、そこにいてくれるから。それだけで。
好きだったんだとつぶやいた三つめの回答は、もう届かなかった。


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最終更新:2011年06月25日 19:14