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3人麻雀

同居している弟が風邪をひいた。
奴も子供ではないので、ひどくなるようなら病院に行くよう言い聞かせて朝は家を出た。
しかしまあ相当苦しそうだったから残業も繰越して看病のために定時で帰ってやれば、
弟は部屋の真ん中で、見知らぬ男二人と雀卓を囲んでいた。
「あ、お兄さん帰ってきた?あーどうもどうも、お疲れ様です」
「おじゃましています…。」
客人はよく見ると同じアパートの住人、東の角部屋大西さんと、一階のホスト君だった。
「兄ちゃんおかえり、はやかったんだ」
「…智、お前」
どういうつもりか問いつめようと肩を掴むと、思いがけず弟の体は朝よりずっと熱い。
「な…、お前、薬ちゃんと飲んだのか!?…病院は?」
智は何か言おうとして、顔を伏せて咳き込んでしまった。すると大西さんが、
「薬は昼過ぎに飲みました。病院には行けていないんですが」
「え、あ、はぁ、そうですか…」
心配そうな顔つきで弟の背中を擦りながら、しかし簡潔に俺に説明してくれた。
いや……何故あんたが答える?
「智君、はい…リンゴジュース。」
かと思えば限りなく金髪に近い茶髪のホスト君が、いつのまにか咳き込む弟の傍らに
ひざまづいて飲み物を差し出している。
え?何この状況。
「って、とにかく寝てなきゃダメだろ!?何麻雀なんかやってんだお前は!」
「……だって」
だるそうに呟いて弟は卓の上に両手をそろえるとその上に額を乗せ、
それから少しだけ顔をこちらに向けて言った。
「朝からずっと一人で寝てるの、寂しかったんだもん…」


「…!?い、今『きゅん』って音がしたよな、二カ所から!ラップ音か…!?」
「何言ってんの兄ちゃん」
「…ははは…お兄さん面白いなー」
「ゴホン…。」
いや、あんた達、何頬染めて顔そむけてる…。
「まあお兄さんも帰ってらした事だし、智君ももう眠ったほうがいいよな?
 俺達はそろそろおいとまさせてもらいますわ」
「あ…どうもなんか、弟がすっかりお世話になっちゃって」
ていうかあんた仕事は…大西さん。
「智君、何かあったら電話して。いつでもいいから…。」
…こいつ男だよ?貧乏学生だよ?ホスト君。
「うん、二人とも…今日は一緒にいてくれてありがとう。今度は四人で麻雀やろうね」
智の笑顔に見送られ、二人は名残惜しそうに各々の部屋に戻っていった。
その後弟を布団に寝かしつけて、俺は雀卓を片付けにかかった。
と、そこでふと恐ろしいものに目が留まった……やけに片寄りのある点棒。
「……なあ、何荘打ったんだ?」
「んー…さあ。昼くらいからずっとやってたし…」
布団の中から眠そうに答える弟の声に、俺は奴の悪行を確信した。
「レートは?」
「…………ぐーぐーぐー。」
「おいっっ!!」
「ぐーぐー……あ、そうだ兄ちゃん、明日は松坂牛ですき焼きにしようね、ぐー。」
「いったいあの二人からいくら巻き上げたんだぁぁぁぁ!!」