故郷

「そんな顔しないで。俺、頑張ってくるよ」
そういって君は、真っ白な羽二重のマフラーを巻いて行ってしまった。
もう二度と、故郷の土を踏めないことを知りながら。

君のいない春が来た。
僕は亡国の名を冠した病のおかげでここにいて。
あんなに元気だった君はいなくなった。

ふと目を落とした先に、小さな真っ白い花が咲いていた。

ああ、ここは。
僕が君にマフラーを渡した場所だ。

「…帰ってきて、くれたんだね」



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最終更新:2011年04月27日 22:44