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小さな死

 大きな体を震わせて、君が泣いている。
 太陽のように明るくて、何時だって元気な君。そんな君がこんなに泣くだなんて思っていなくて、俺は慰めることも出来ずに立ちすくんでいた。
 足元には小さな墓石。良く見なければ庭に落ちている単なる小石と思ってしまいそうなそれに、君の歪な字が並んでいる。
 君の目から溢れる涙が墓石と土を濡らして、まるで雨の跡のように大地が色付いた。
「笑うなら、笑えよ……」
 何も言えず立ちすくんでいた俺を、見る事無く君が言う。自嘲気味な色を含んだ沈んだ声は、押さえきれぬ涙を笑って欲しいといっているようだった。
 俺はゆるりと首を振って、静かに君の頭へと手を伸ばした。母親が子供を慰めるように、ゆっくりと撫でてやる。
 ごわりとした短い毛が掌にあたって、ほんのりくすぐったい。
「笑うもんか。大切だったんだろ」
「……格好悪いだろ、小鳥一匹死んで泣くなんて」
「死は死だ。悲しんで何が悪い」
 身近な死に泣けない奴の方が問題だ、と言ってやれば君はまた嗚咽を大きく響かせる。
 図体が大きくて、顔もどちらかと言えば厳つくて、涙なんて流しそうにも無い君。けれど俺は、君が心の優しい人だって良く知っている。
 ――君がどれだけあの子を好きだったかも、俺は良く知って居るのだから、笑う理由なんて何処にも無いのだ。
「胸、貸してやる。誰にも言わないから安心しろよ」
 ぐいと顔を引き寄せて、無理やりに俺の胸へと押し付ける。君は大きな体をくの字に曲げて、シャツにしがみ付きながら声を枯らしながら泣いた。
 鼓膜を擽る君の嗚咽が愛しい。口元に浮かびかけた微笑をぐっと飲み込んで、俺は優しく背を撫でた。
「……本当に、誰にも……言うなよ。約束、だぞ」
 泣きながら君が懸命に言葉を紡ぐ。安心させるように二度ほど頷いて、約束だと笑ってやる。

 ――誰が言うものか。君の優しい、可愛らしい部分は、俺だけが知っていればいい。