3人麻雀
「あ、ワリィそれ当たり」
「うっそマジ?今日ついてねぇー!うっわ、しかもドラ2かよ勘弁してくれよー」
そんな二人をぼんやり眺めながら、僕は自分の牌をパタン、と倒した。
「やっぱ3人じゃ回るのはえーよ。なあ、健一のヤツ今日帰ってこねぇの?」
いつもだったら、もっと楽しいんだけど。
「おい、卓二?」
「…あ、ごめん。ちょっと分からないや、聞いてないから…」
「そっか、珍しいな。お前らいつも二人ワンセットなのに」
ずきり、と胸が痛んだけど、僕はそれを押し隠して笑顔を作った。
「えー、そうだっけ?もういい年なんだし、そんなことないよ」
ジャラジャラと牌を混ぜる音。
いつもだったら、僕の右隣に健一がいて。
それで僕がポンすると、飛ばされたって文句をいうのに。
今日は、いない。昨日僕がひどいことをしたから。
生まれた時から一緒にいて、それが当たり前だと思っていた。
生まれた時間は5分しか違わないのに、
なんとなくアイツは兄貴風を吹かせたりして。
そんなところが可愛いと思ってた。ずっとずっと、大好きだったんだ。
だから…。
今日、木枯らし1号が吹いたってニュースでやっていた。
こんな寒いのに、今頃何してるんだろう。早く帰ってくればいいのに。
「おい卓二、お前調子悪いのか?」
「今日はもうお開きにするか?そういや顔色もなんか白っぽいし」
「…そんなことないよ。ちょっと冷えちゃったのかも。お茶入れてくるね」
僕はそういって、慌てて台所へ向かった。
アイツがいないのに、二人が帰ったらこの部屋に僕一人になっちゃうじゃないか。
狭いアパートなのに、一人だとやけに広くて寒いんだ。
「はやく帰っておいでよ、兄さん…」
最終更新:2011年04月27日 22:03