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木枯らしが吹いたので決心しました

会社を出た途端に吹き抜ける風に、スーツの胸元を押さえ、お世辞にも
小さいとは言えない体を屈めた。
いくら東京に出て何年も過ぎたとは言え、沖縄出身の俺。
晩秋の寒さは未だに慣れる事が出来ないでいる。
駅まで続く道を歩けば、屋台のおでん屋が旨そうな匂いを放っている。
学生時代には苦くて仕方なかったビールも飲めるようになったし、
いつの間にか日本酒の旨さも覚えた。
空にはほんの少しの星。あの形はオリオン座だろうか。

肌寒さもあいまって、ふとあいつに会いたくなった。
東京に出て初めての冬、ようやく有難みを知ったあいつに。
沖縄にいた頃は邪険にしてしまって、優しさと暖かさに目を背けていた
自分は今思えばどうしようもない子供だったのだろう。
胸ポケットから取り出した携帯電話でも
滅多に押す事のないナンバーを押して音に耳を傾ける。
仕事が一番で、筆不精。しかも出不精という最低な俺を、きっとあいつは
変わらずに笑顔で迎えるのだろうと思ったら、頬に笑みが浮かんだ。
「もしもし? …ああ、俺だけど。久しぶり」