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× 男と女
○ 犬と飼い主

「『あたし、この時を待ってたの。嬉しいわ、二人っきりなのね』
 『おい、よさないか、はしたない』
 『いやいや、つれないこと言わないで。ほら、好きにしていいのよ。
  んちゅーうううう』
 『こら、やめなさい、やめなさいったらああんーむむ』」
「やめんか」
あろう事か、唇を尖らせ、自分で自分を抱きしめてまで熱演し始めた友人を見ていられなくなって、俺はいい加減静止の声を掛けた。
窓辺に座って外を眺めていた友人はさっと素の顔に戻ると、
「さて、今のは何だと思う?」と突飛な問答を仕掛けてくる。
「公園でいちゃつく男女、と言いたいところだが、大方飼い主と、それにじゃれてる犬といったところだろう。お前がそんなベタベタカップルを長時間観察していられるとは思えんし」
せいかーい、と友人は両手を上げる。足を骨折して動けない俺の元に見舞いに来ては、退屈だろうからと下界の光景をその都度身振り手振りで教えてくれているのだ、勝手なフィクションを交えて。
ミュウ、ミュウとカモメの鳴き声がここまで届いてくる。
「ああ、いい風だ!次は船乗りとダースベイダー、行ってみようか」
「やめてくれ」
ほんとに知りたいのは、お前のそのわけの分からない、頭ん中だよ。
浜風に髪を揺らしてけらけらと笑っている友の横顔を見て、俺も笑った。