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あいつじゃなきゃ駄目なんだ

「いいかげんにしろよ!」
俺は隆の腕を捕まえた。
「あいつはお前のことを都合の良いときに好きなように扱える玩具だと
思ってるんだよ。社長令嬢と結婚して、子供も生まれて、それでも
男遊びはやめられないから、口の堅いお前をキープしてるだけなんだ!
こんな関係で、お前はいいのか?お前は幸せなのか?!」
隆は笑った。とても、とても寂しそうに。その笑顔を正視し続けることが
できなくなって、俺は隆を抱きしめた。
「俺なら、お前だけを大事にする。贅沢なマンションは与えてやれないけど、
ずっとお前の側にいてやる。俺なら....っ!」
俺の腕の中で、隆はそっと、でも確かな意志を込めた手で俺の胸を押した。
うつむいたまま体を離し、隆は言った。
「ありがとう......でもごめん。あいつのことも、君の真剣な気持ちもわかって
るんだ。でも、理屈じゃないんだよ。頭でわかっててもどうしようもないんだ」
隆は顔を上げた。そして笑った。
「僕が...僕自身が、あいつじゃなきゃ駄目なんだ」
何もかもを飲み込んで、それでも笑う隆。
胸の中に湧き上がる堪らない不安に、思わず俺はもう一度隆を抱きしめた。
「駄目だ!俺のことを好きになってくれなくたって良い、あいつじゃなきゃ駄目な
ままでも良い。でもお前は、そんな風に笑ってちゃいけないんだ。
全部を諦めた笑顔なんて、お前はまだしてちゃいけないんだ!
駄目だ、駄目だ、駄目だっ!」
いつの間にか、俺は涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら子供のように喚いていた。