※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

恥ずかしいけど手を繋ぐ

肩で荒く息を吐く。脳内が倦怠感とその吐息で埋められる。
正直、身体を重ねることに対しては何も不満はなかった。
それで一時でもお前を俺のものに出来るのならば。
一瞬でも、お前の目の中に俺が映っているのならば。
その場所にお前の愛情などなくても、お前が提案してきてくれたんだから良いと思った。

だけど、どうしてだろう。
10回目の逢瀬から、何かもやもやしたものが心に突っ掛かっている。
20回目の夜を越すと、それは喉元から出そうなほど内心を満たしてきていた。
俺はお前で満たされればそれで良いのに。一瞬でもいいから。
そう何度も言い聞かせて迎えた30日目の夜。

はぁっと大きな甘い吐息を吐き出して、虚ろな表情のお前が笑った。
その瞳には俺が映り込んで揺れていた。
緩慢な動作で繋がりを解いても、お前の目は俺に纏わりついて離れない。
甘く鋭い痛みを伴う視線。俺は顔を背けて、お茶のペットボトルを取ろうとベッドから腰を上げた。
「逃げンなよ」
伸ばされた手が俺の指先に絡んだ。呆然として振り向くと、やはりお前は笑んでいる。
「俺はようやく逃げられないって観念したのに」
指を弄ぶお前が喉で笑う。絡められた指を強く引かれて、俺は再びお前の隣に腰を下ろす。
喉先で滞留していた言葉にならない文字列が、沈黙の中互いの手のぬくもりで昇華した。
「本気の奴と最初につながりたいなら、アソコでも舌でも身体でもなく、まず手を差し出せよ」
「…だからカイは手を」
「それ以上言ったら明日骨折してても知らねーぞ」