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遠足帰り

ここに一人の父親がおります。
息子は可愛い盛りの小学2年生。
理由あって母親は不在です。
(注・デリケートな問題なのであまり追求はしないで下さい)

毎晩風呂場にて九九の練習に励む仲のよい父子でありますが、
今日と言う日、一ヶ月も前から息子が大変楽しみにしていた遠足の、
天気も気持ちのいい秋晴れだというのに、父は風邪をこじらせ高熱のため、
朝になっても寝床から起きることができませんでした。
料理自慢の腕を振るってお弁当を作ることも叶わず、
しかし、しっかり者の息子は、早々にお隣に住むおばあちゃんにSOSを出し、
自らのお弁当とさらには父用のお粥まで手配して、身支度も完璧にして、
元気に「いってきます!」と出かけて行ったのでした。
何とか身を起こし、息子を送り出しながら父は
「本当に、できた息子を持ったものだ。誰に似たんだろう?
 俺じゃないよなぁ…俺じゃないなぁ…うん、俺じゃない」
などと、熱で朦朧とする頭で考えたのでした。

さて、時は経ちまして、遠足も終わり息子の帰宅もそろそろかという夕刻。
父は相変わらず夢現のなかで臥せっています。
そこに、ぴんぽーん…と呼び鈴がひとつ鳴り、暫し間を置き再び、ぴんぽーん。
夢から徐々に現へと引き戻すその音は、さらに少しの間の後、三度目が鳴りました。
超しっかり者の自慢の息子は、きちんと鍵を持って出かけたはずなのだが、
できれば他の訪問者なら居留守を使いたいくらいダルイのだが、
そう思いつつも父は、何とか寝床から這い出し、玄関へと向かうのでした。
扉の前まで辿り着くと、外から遠慮がちに
「すみませーん…佳くんのお父さん?」
と繰り返し言いながら、コンコンと戸を叩く音が聞こえました。
もしや?と思い、玄関の扉を開けると向こうにいたのは、
息子の学校の担任の先生と、その背に負ぶわれて眠っている息子でした。
「息子はどうかしたのですか?」
と問うつもりが、荒れた咽喉と激しい咳がそれを許さず、
さらには、一度咳き込むとなかなか止まらなくなってしまい、
みかねた先生に優しく背を撫でられたりしてしまい、
さらにさらに、その場にヘタリ込んでしまう父を先生は
息子を背に負うたまま支えた上、寝室まで連れて来てくれたのでした。

「面倒を掛けて申し訳ない」
そう謝りたいのに、逆に
「勝手にお邪魔してしまってすみません」と先生に謝られてしまい、
父は何だか風邪だけが原因じゃない熱が上がる気がしました。
朝は元気に出て行った息子でしたが、昼を過ぎた辺りから調子が悪くなり、
帰りのバスの中で吐いてしまったこと、お家の人に迎えに来てもらおうと言ったが
「お父さんは病気だから」と断固として譲らなかったこと、どうやら息子も
風邪をひいたのではないかということを先生は話しながら、
父と息子の熱を測り、水枕を用意してやり、
「お嫌いでなければ」
そう言って玉子酒を作ってくれました。
父の熱は、お酒のせいで、さらに上がった…今はそういうことにしておきましょう。